演題61 手術症例からみた無症状胆石の手術適応

近年, 超音波検査などの検査技術の向上や人口の高齢化につれて, 無症状胆石が増加している. 今回われわれは, 教室で経験した胆石手術例を基にして, 無症状胆石の手術適応について検討した. 「結果」:1)無症状胆石の特徴;最近の12年間に手術した胆石症616例のうち, 無症状胆石は42例6.8%を占め, 全て胆嚢結石であった. このうち, 他疾患手術時に胆摘術を付加した症例を除いた狭義の無症状胆石は20例であり, 前期の15例に対して後期の6年間では27例と2倍となっていた. 年齢分布では, 有症状例が50歳代に多いのに比して, 60歳代が15例と高齢者に多いが, 他疾患合併例を除くと, 有症状...

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Veröffentlicht in:胆道 1988, Vol.2 (3), p.362-362
Hauptverfasser: 児玉悦男, 谷村弘, 谷真至, 長浜実穂, 笠野泰生, 石本喜和男, 青木洋三
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Zusammenfassung:近年, 超音波検査などの検査技術の向上や人口の高齢化につれて, 無症状胆石が増加している. 今回われわれは, 教室で経験した胆石手術例を基にして, 無症状胆石の手術適応について検討した. 「結果」:1)無症状胆石の特徴;最近の12年間に手術した胆石症616例のうち, 無症状胆石は42例6.8%を占め, 全て胆嚢結石であった. このうち, 他疾患手術時に胆摘術を付加した症例を除いた狭義の無症状胆石は20例であり, 前期の15例に対して後期の6年間では27例と2倍となっていた. 年齢分布では, 有症状例が50歳代に多いのに比して, 60歳代が15例と高齢者に多いが, 他疾患合併例を除くと, 有症状例とほぼ同様の分布を示した. 胆石の種類では, コ系石が29例69%と最も多く, また黒色石も6例14.3%と多かった. 手術時に採取した胆汁の細菌学的検索を行った18例全てが細菌培養陰性であった. 手術成績では, 手術死亡はなく, 術後に何らかの愁訴を訴えたものは2例あったが, いづれも他疾患合併手術例であった. 2)胆石手術例の検討;(1)全手術例のうちコ系石は430例69.8%であり, このうち胆管内にも結石を有していたのは80例18.6%であった. 各年代別にコ系石の胆管内有石率をみると, 40歳以下の2.6%に比し, 60歳代では23.7%, 71歳以上では24.4%と加齢とともに胆管内の有石率が上昇し, 胆嚢内の胆石が胆管へと逸脱して行く. (2)手術時に採取した胆汁の細菌培養陽性率は, 40歳以下では6.1%と低いのに比し, 61歳以上では49.3%と高率であった. (3)胆嚢癌合併例は11例1.8%あり, 男3例, 女8例と女に多く, 91%の症例は60歳以上の高齢者であった. 術前に胆嚢癌合併を診断し得たのは3例に過ぎず, またStage III, IVの進行癌が46%と半数を占めている. しかも, 胆石と診断されてから2年以上経過している例が5例あった. (4)コ系石430例のうちで, 腹部単純X線写真上陽性像を呈したものは23%を占めていた. したがって, 胆石溶解剤投与の適応をコ系石で腹部単純X線写真上結石像陰性のものとしても, その適応と考えられるものは, 全胆石例中53.2%に過ぎないことになる. 「結語」:無症状胆石の手術成績は良好であること, 経過観察の長期化に伴い胆石の胆管への逸脱, 胆汁中細菌陽性化や胆嚢癌の発生が高まる可能性, また胆石溶解剤の適応例が意外に少ないことが示唆され, 現在のところ, 無症状胆石であっても積極的に手術を勧めるべきであろう.
ISSN:0914-0077