シ(1)-5 早期胆管癌の臨床病理学的検討

教室で過去18年間に手術を行った肝外胆管癌127例中Stage I症例は15例であった. 今回Stage I症例中組識学的に癌深達度が胆管壁内に留まっていた12例(粘膜内‐m癌3例, 線維筋層内‐fm癌5例, 外膜内‐af癌4例)を臨床病理学的に検討し, 早期胆管癌の定義と診断について考察した. 癌の占居部位をみると右肝管1例, 上部3例, 中部5例, 下部2例, 広範囲1例であった. 大きさはm癌が3例とも2cm以下であったのに対し, fmとaf癌の9例では1cm以下1例, 2~4cm4例, 4~6cm4例と深達度が増すにつれて広範囲に胆管壁を肝側, 十二指腸側へ浸潤していた. 腫瘍の肉眼的...

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Veröffentlicht in:胆道 1988, Vol.2 (3), p.310-310
Hauptverfasser: 古賀政隆, 角田司
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:教室で過去18年間に手術を行った肝外胆管癌127例中Stage I症例は15例であった. 今回Stage I症例中組識学的に癌深達度が胆管壁内に留まっていた12例(粘膜内‐m癌3例, 線維筋層内‐fm癌5例, 外膜内‐af癌4例)を臨床病理学的に検討し, 早期胆管癌の定義と診断について考察した. 癌の占居部位をみると右肝管1例, 上部3例, 中部5例, 下部2例, 広範囲1例であった. 大きさはm癌が3例とも2cm以下であったのに対し, fmとaf癌の9例では1cm以下1例, 2~4cm4例, 4~6cm4例と深達度が増すにつれて広範囲に胆管壁を肝側, 十二指腸側へ浸潤していた. 腫瘍の肉眼的分類を胃癌の早期癌分類を加味して行うと, m癌はI型1例, I+IIa2例, fm癌とaf癌はそれぞれI型1例, 0例, I+IIa2例, 2例, IIa1例, 1例, 結節浸潤型1例, 1例であり12例中6例は主病巣のI型から連続してみられるIIa病変を伴っていた. 術前診断をみると5才女児のBotryoid Sarcomaの1例と胆管拡張症に合併した2例のIIa病変は診断不能であったが, 黄疽を呈し直接胆道造影にて胆管腔内の腫瘤様陰影欠損像を示した5例(m, fm癌各2例, af癌1例)と腹痛を主症状とし無黄疽の2例(m, fm癌各1例)はUSで胆管腔内に突出する腫瘤が描出でき, これら7例は胆管腔内に留まる早期の癌の診断が可能であった. なお術前の胆汁細胞診の陽性率は, 施行7例中の3例(m癌2例, fm癌1例)43%であった. 組織型は乳頭腺癌5例, 高分化管状腺癌2例, 低分化管状腺癌1例であった. 浸潤増殖様式をみるとm, fm癌ではINFα4例, β4例, af癌ではINFβ2例, γ2例であった. リンパ管浸潤(ly)と神経周囲浸潤(pn)を検索するとm癌ではそれぞれ0/3, 0/3, fm癌では2/5, 0/5, af癌では3/4, 3/4と深達度が増すにつれて高い陽性率を示した. 手術術式は胆管切除5例, PD4例, 肝門部切除2例, 肝右葉切除1例で, 術後病理学的に診断された3例を除く9例にR1からR3のリンパ節郭清を行ったが全てにリンパ節転移は認めなかった. 切除断端癌陽性例は3例(af癌)で2例が1.9年, 3.1年で再発死した. また2例(m癌)が術後合併症で早期に, 1例(fm癌)が2年目に他病死し, さらにm癌とaf癌の各1例が術後8.8年, 7.3年に再発死亡した. 他の4例は現在2ヵ月から12年4ヵ月にわたり生存中である. 以上我々の結果からは深達度と予後の関係が明白ではなかったが, 癌がfmを越えafに達するとINFγ, ly+, pn+となり, 胆管壁を広範囲に浸潤する症例が増加することより, 深達度がfmまでに留まる癌を早期癌と考えている.
ISSN:0914-0077