演題21 早期十二指腸乳頭部癌診断の問題点

過去11年間に切除された乳頭部癌24例のうち, Oddi筋を越えた癌腫の増殖を認めない, いわゆる早期乳頭部癌4例について臨床病理学的検討を加えた. 症例は46才から68才までの男女各2例であり, 早期癌でありながら病悩期間に比較的長期のもの(8月, 11月)があった. 初発症状は発熱2例, 腹痛, 倦怠感各々1例であり, 黄疽は2例が動揺性黄疽を呈したが, 他の2例は無黄疸であった. 血液生化学的検査では全例で血清ALPの上昇を, 2例で血清アミラーゼ及びトランスアミナーゼ値の上昇を認めた. ERCP及びPTC像では3例で拡張した胆管末端部に陰影欠損を認めたが, 1例は膵胆管とも正常であった...

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Veröffentlicht in:胆道 1987, Vol.1 (2), p.278-278
Hauptverfasser: 神沢輝実, 田畑育男, 伊沢友明, 江川直人, 近藤博満, 岡本篤武
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:過去11年間に切除された乳頭部癌24例のうち, Oddi筋を越えた癌腫の増殖を認めない, いわゆる早期乳頭部癌4例について臨床病理学的検討を加えた. 症例は46才から68才までの男女各2例であり, 早期癌でありながら病悩期間に比較的長期のもの(8月, 11月)があった. 初発症状は発熱2例, 腹痛, 倦怠感各々1例であり, 黄疽は2例が動揺性黄疽を呈したが, 他の2例は無黄疸であった. 血液生化学的検査では全例で血清ALPの上昇を, 2例で血清アミラーゼ及びトランスアミナーゼ値の上昇を認めた. ERCP及びPTC像では3例で拡張した胆管末端部に陰影欠損を認めたが, 1例は膵胆管とも正常であった. 十二指腸内視鏡所見は腫大した主乳頭開口部の発赤ないしびらんを3例で認めた. 他の1例は主乳頭は健常で, 縦ひだ上口側に不整粘膜面よりなる瘻孔状開口部を認め, 同部よりcannulaを挿入すると主乳頭開口部への交通がみられた. 生検診断は最終的に3例で癌陽性であったが, 初回生検で陽性は1例のみであり, 残る3例のうち1例は乳頭部腺腫, 2例は再生性十二指腸粘膜の診断であった. 他の画像診断であるUS, CT, 血管造影は早期乳頭部癌診断に無役であった. このような生検陰性乳頭部腫大病変の良悪性鑑別診断は, 直接胆道造影所見を参考とし, 繰り返して生検を施行することが肝要である. 全例乳頭部癌の診断のもとに膵頭十二指腸切除術がなされ, 術後現在まで再発の徴候なく生存中である(78, 55, 30, 10月). 切除標本の病理組織学的検索では, 腫瘍は全例露出腫瘤型を呈し, 大きさは最大径2cmが3例, 1cmが1例であった. 組織型は全例乳頭腺癌で, 共通管部(Ac)を中心に乳頭状増殖を示し, 一部でOddi筋内に浸潤を認めたが, それを越えた浸潤はみられなかった. 癌腫の膵管への浸潤はみられなかったが, 2例で胆管内へpolypoidの発育を, 1例で胆管粘膜をはうような上皮内進展を認めた. 脈管侵襲は1例でOddi筋内のリンパ管に軽微の浸潤(ly1)がみられたのみであった. 神経浸潤及びリンパ節転移は認められなかった. (まとめ)癌腫がOddi筋を穿破しない, いわゆる早期乳頭部癌の診断に際し, 内視鏡所見と生検診断が最も信頼されるべき診断方法である. 生検陰性の場合は, 良性の腺腫や乳頭炎との鑑別困難な症例もあり, かかる症例においては慎重なる反復検査が大切である.
ISSN:0914-0077