4. 破骨細胞によるトランスサイトーシスを介したグルタミン酸分泌とその生理的意義

【目的】グルタミン酸(L-Glu)は中枢神経系における主要な神経伝達物質である. L-Gluの機能は, 小胞型輸送体によるL-Gluの濃縮と開口放出(出力系), グルタミン酸受容体によるシグナルの受け取り(入力系), 細胞膜型グルタミン酸輸送体によるL-Gluの回収(終止系)という一連のシステムにより支えられている. 近年, 骨においても, 骨細胞, 骨芽細胞及び破骨細胞にグルタミン酸輸送体やグルタミン酸受容体が発現していると報告され, L-Gluが細胞間情報伝達物質として機能すると考えられている. しかし, L-Gluがどこからどのように放出されるのかは不明である. 我々は, 小胞型グルタミ...

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Veröffentlicht in:松本歯学 2006, Vol.32 (2), p.171-172
Hauptverfasser: 上原俊介, 森本理代, 八代聖基, 樹下成信, 林美都子, 妹尾繁範, 溝口利英, 二宮禎, 宇田川信之, Zhaolin Hua, 表弘志, 山本章嗣, Robert H. Edwards, 森山芳則
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Zusammenfassung:【目的】グルタミン酸(L-Glu)は中枢神経系における主要な神経伝達物質である. L-Gluの機能は, 小胞型輸送体によるL-Gluの濃縮と開口放出(出力系), グルタミン酸受容体によるシグナルの受け取り(入力系), 細胞膜型グルタミン酸輸送体によるL-Gluの回収(終止系)という一連のシステムにより支えられている. 近年, 骨においても, 骨細胞, 骨芽細胞及び破骨細胞にグルタミン酸輸送体やグルタミン酸受容体が発現していると報告され, L-Gluが細胞間情報伝達物質として機能すると考えられている. しかし, L-Gluがどこからどのように放出されるのかは不明である. 我々は, 小胞型グルタミン酸輸送体(Vesicular glutamate transporter;VGLUT)を指標として骨におけるL-Glu分泌細胞を同定し, さらに, L-Gluがどのように分泌されるのか, 分泌されたL-Gluはどのような機能を持つのかを調べた. 【方法】分子生物学的および免疫組織化学的手法によりVGLUTs発現細胞を, 免疫電子顕微鏡法により破骨細胞におけるVGLUT 1の細胞内局在を調べた. 脱分極刺激を加えた際に上清中に放出されるL-Glu量をHPLCで, また, 蛍光標識された骨分解産物量を蛍光光度計で測定した. 破骨細胞に発現していた代謝型グルタミン酸受容体(mGluR)8のアンタゴニストであるCPPGを作用させたときの骨吸収活性をpit assayにより調べた. VGLUT 1遺伝子欠損マウスの骨量をマイクロCTにより測定した. 【結果】VGLUT 1が破骨細胞のトランスサイトーシス小胞に発現していた. 脱分極刺激により, 破骨細胞はL-Glu及び骨分解産物をカルシウム及び温度依存的に放出した. また, トランスサイトーシス阻害作用を持つノコダゾールは両者を抑制した. L-GluはmGluR 8を介して細胞内cAMPを低下させ, トランスサイトーシスを抑制した. CPPGは骨吸収活性を増加させた. 4ヶ月齢のVGLUT 1遺伝子欠損マウスは骨粗鬆症様の形質を示した. 【考察】骨組織において, L-Gluは成熟破骨細胞からトランスサイトーシスにより放出される. L-Gluの分泌がカルシウムと温度に依存することから, トランスサイトーシスは開口放出機構を含む制御された過程であると考えられる. 放出されたL-Gluは, 破骨細胞に発現しているmGluR 8を介して, オートクライン的にトランスサイトーシスを抑制する. また, mGluR 8アンタゴニストが骨吸収活性を増加させることから, L-Gluは骨吸収活性も抑制していると考えられる. すなわち, 骨組織においてL-Gluはオートクライン的に破骨細胞機能を負に調節する因子であると言える. VGLUT 1遺伝子欠損マウスが骨粗鬆症様の形質を示すのは, L-Gluによる破骨細胞機能の抑制が解除されるためであると考えられる.
ISSN:0385-1613