4. OPG遺伝子欠損マウスにおける骨形成亢進は, ビスフォスフォネート投与による骨吸収抑制と共に阻害される

目的:活性型ビタミンDなどの骨吸収促進因子は, 骨芽細胞に作用し, 破骨細胞分化因子であるRANKLを発現させる. 骨芽細胞の細胞膜上のRANKLが, 破骨細胞前駆細胞または成熟破骨細胞に発現しているRANKLの受容体であるRANKと結合することにより, 破骨細胞の分化や活性化が誘導される. osteoprotegerin(OPG)はデコイ受容体としてRANKと結合し, RANKLとの結合を阻害することにより, 破骨細胞の分化や成熟破骨細胞による骨吸収活性を阻害する. OPG遺伝子欠損マウスは, 骨量の減少が著明に認められ骨粗鬆症の症状を呈する事が明らかとされた. さらに, OPG欠損マウスで...

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Veröffentlicht in:松本歯学 2002, Vol.28 (3), p.163-164
Hauptverfasser: 中村美どり, 中村浩志, 平岡行博, 小林泰浩, 松浦幸子, 小澤英浩, 宇田川信之, 高橋直之, 宮沢裕夫
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:目的:活性型ビタミンDなどの骨吸収促進因子は, 骨芽細胞に作用し, 破骨細胞分化因子であるRANKLを発現させる. 骨芽細胞の細胞膜上のRANKLが, 破骨細胞前駆細胞または成熟破骨細胞に発現しているRANKLの受容体であるRANKと結合することにより, 破骨細胞の分化や活性化が誘導される. osteoprotegerin(OPG)はデコイ受容体としてRANKと結合し, RANKLとの結合を阻害することにより, 破骨細胞の分化や成熟破骨細胞による骨吸収活性を阻害する. OPG遺伝子欠損マウスは, 骨量の減少が著明に認められ骨粗鬆症の症状を呈する事が明らかとされた. さらに, OPG欠損マウスでは, 骨芽細胞の活性が骨形態計測学的に正常マウスと較べ高い値を示し, 血清アルカリホスファターゼ(ALP)活性も, 正常マウスと較べ約4倍高い値を示すことから, OPG欠損マウスでは骨形成も非常に活発に行われていることが示された. つまり, OPG欠損マウスにおいては, 骨吸収の亢進とカップルして骨形成も活性化しており, この相互作用においては, ある種のカップリングファクター(共役因子)の存在が示唆された. 以上の結果をふまえ, 骨代謝におけるカップリングファクターの存在を検証した. 実験方法:実験は, 14週齢雄のOPG欠損マウスおよび正常マウスにビスフオスフォネート(リセドロネート)を30日間毎日0.3μg皮下投与した. と殺前にテトラサイクリンとカルセインの2重標識を行い, 腰椎および大腿骨を採取して骨組織標本を作製し, 組織学的観察と骨形態計測を行った. また, これらのマウスの血清中のALP活性を測定した. 結果:1. 組織学的観察:正常マウスにビスフォスフォネートを投与すると, 大腿骨海綿骨の骨梁が増加した. 一方, OPG欠損マウスでは, 骨梁の吸収が著しく, 成長板の一部に破壊が認められ, 破骨細胞による骨吸収が亢進している様子が認められた. また, OPG欠損マウスにビスフォスフォネートを投与すると, 骨吸収の抑制と成長板の形態回復が認められた. OPG欠損マウスにおける大腿骨成長板直下の観察では, 立方形を呈する活性化した骨芽細胞が多数認められた. OPG欠損マウスにビスフォスフォネートを投与すると, 立方形を呈する活性化した骨芽細胞は扁平化した. 2. 骨形態計測:腰椎の骨形態計測結果から, OPG欠損マウスにおいて高い値を示す骨吸収マーカー・(吸収面・破骨細胞面・破骨細胞数・骨吸収速度)および骨形成マーカー(類骨量・骨芽細胞面・石灰化速度・骨形成速度)は, ビスフォスフォネート投与により共に減少した. 3. 生化学的解析:血清ALP活性は, OPG欠損マウスでは正常マウスと比較して, 約4.6倍高い値を示したが, ビスフォスフォネートの投与によって正常レベル以下に低下した. 考察:OPG欠損マウスでは骨吸収の亢進と共に骨形成も著しく亢進していたが, ビスフォスフォネートの投与により骨吸収を抑制したところ, 骨形成も強く抑制された. 以上の知見から, 破骨細胞による骨吸収促進と骨芽細胞による骨形成促進は共役しており, 骨代謝共役因子の存在が強く示唆された.
ISSN:0385-1613