2. 舌腫瘍術後患者に嚥下補助装置を用い機能回復をはかった症例

「I. 緒言」舌腫瘍術後患者に嚥下補助装置を作製し, 装置使用前後のビデオ透視造影検査(VF)による評価をおこない, 同時に残存顎堤粘膜保護を目的とした装置を作製したので報告する. 「II. 症例概要」患者は64歳の男性で, 舌の腫瘤が気になることを主訴に平成12年9月に北海道大学歯学部附属病院を来院した. 3~4年前より舌の白板を自覚していたが放置し, 平成12年8月頃には下顎部分床義歯による接触痛が出現し, 釧路赤十字病院からの紹介で当病院を受診した. 当口腔系歯科にて左舌腫瘍(T3N2cM0)の診断のもとに, 舌の亜全摘出術と下顎残存歯の抜歯を受けた. 「III. 経過および考察」嚥下す...

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Veröffentlicht in:日本補綴歯科学会雑誌 2001, Vol.45 (6), p.797-797
Hauptverfasser: 三浦美文, 堀田香世, 仲瀬晶穂, 川崎貴生, 鄭漢忠
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:「I. 緒言」舌腫瘍術後患者に嚥下補助装置を作製し, 装置使用前後のビデオ透視造影検査(VF)による評価をおこない, 同時に残存顎堤粘膜保護を目的とした装置を作製したので報告する. 「II. 症例概要」患者は64歳の男性で, 舌の腫瘤が気になることを主訴に平成12年9月に北海道大学歯学部附属病院を来院した. 3~4年前より舌の白板を自覚していたが放置し, 平成12年8月頃には下顎部分床義歯による接触痛が出現し, 釧路赤十字病院からの紹介で当病院を受診した. 当口腔系歯科にて左舌腫瘍(T3N2cM0)の診断のもとに, 舌の亜全摘出術と下顎残存歯の抜歯を受けた. 「III. 経過および考察」嚥下する時は, 上顎右側の残存歯と下顎の残存顎堤が接触することによって, 下顎の位置が規制され, 再建部位が口蓋に接触しづらく嚥下困難な状況にあった. まず通常どおり部分床義歯を作製し, その後口蓋部を粘膜調整材を用いて動的印象し, VFにより嚥下の状況を確認後レジンに置換した. VFでは, ゼリーの口腔および咽頭通過時間の明らかな短縮が認められたが, 2秒以上かかっていた. これは舌がないことによる食物の後方への送り込みが不可能であることが原因と思われた. 治療の経過中, 歯牙による加圧により皮弁左側に潰瘍を形成し, 治癒不良のため歯冠部の切断が必要となった. 下顎右側残存顎堤にも潰瘍形成の危険性が考えられたため, 軟性材料を応用して夜間のみ使用する粘膜保護装置を作製した. 現在のところ経過は良好だが, 今後も注意深い経過観察が必要である.
ISSN:0389-5386