3. 高齢者の顎関節画-義歯装着による症状の改善
「I. 目的」演者らは当院における高齢者の顎関節症での臨床的観察より(1)初診から3カ月以上の治療期間を要した長期治療群では, III型とIV型の割合が高く, (2)一度発症すると, 義歯装着者や残存歯の咬合接触が少ない症例では治療が長期化する傾向がみられることを報告した. これによって, 咬合支持を喪失した高齢者の顎関節症では, 治療に際し速やかに適切な義歯の装着を必要とする症例が少なくないことが明らかとなった. 今回, 義歯装着後の経過を詳細に観察し, 治療効果を考察した高齢者の顎関節症症例を報告する. 「II. 方法」症例は68歳の女性で, 開口時の右顎関節部の閉業を主訴に当科を受診した...
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Veröffentlicht in: | 日本補綴歯科学会雑誌 1998, Vol.42 (6), p.1107-1107 |
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Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 「I. 目的」演者らは当院における高齢者の顎関節症での臨床的観察より(1)初診から3カ月以上の治療期間を要した長期治療群では, III型とIV型の割合が高く, (2)一度発症すると, 義歯装着者や残存歯の咬合接触が少ない症例では治療が長期化する傾向がみられることを報告した. これによって, 咬合支持を喪失した高齢者の顎関節症では, 治療に際し速やかに適切な義歯の装着を必要とする症例が少なくないことが明らかとなった. 今回, 義歯装着後の経過を詳細に観察し, 治療効果を考察した高齢者の顎関節症症例を報告する. 「II. 方法」症例は68歳の女性で, 開口時の右顎関節部の閉業を主訴に当科を受診した. 初診時の開口量は上下顎中切歯切縁距離23mmと制限が認められた. 口腔内所見では7665┘, 7┐, ┌4567が欠損していたが, 義歯装着時床下粘膜の疼痛のため, 長期間に亘って義歯を装着していなかった. X線CT像では, 右側下顎頭の骨皮質明瞭で, 前関節面にoscophyteの形成が認められた. 以上の所見から, 右側変形性顎関節症(IV型)と診断した. 治療として下顎位の安定化と咬合の均等化をはかるため, 旧義歯を治療用義歯として装着した. 治療効果は疼痛の軽減や開口量の増加なと臨床的に評価した. 「III. 結果と考察」右顎関節部の疼痛は治療義歯装着後2週間で消失した. その後, 義歯調整と経過観察を約3カ月行った. 治療後, 開口量38mmに回復し, 日常生活での支障はなくなり患者の満足が得られた. 現病歴から本例は咬合支持の喪失が発症と関連したと考えられる高齢者の顎関節症IV型であった. 義歯装着によって早期に咬合支持を回復し, 顎関節部や咀嚼筋への負荷を軽減させたことが, 比較的短期間での症状改善に寄与したものと推察できた. IV. 文献:三浦香, 野村修一, 河野正司, 他:高齢者における顎関節症の臨床的観察, 老年歯科医学会誌, 12:26-31, 1997. |
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ISSN: | 0389-5386 |