19 歯胚発育遅延を伴う萌出障害を認めた上顎側切歯の4例

緒言:小児歯科臨床において, 歯胚の発育遅延ならびにそれに起因した萌出遅延はよく経験するところである. 今回, 当院において比較的頻度が少ないと思われる上顎側切歯歯胚の著しい発育遅延を認めた4例を経験した. これらの症例について経過, 処置を含め, 若干の検討を加えた. 結果:(1)側切歯歯胚発育遅延を認めたのは, 7歳3か月から8歳10か月であり(平均7歳10か月), 4例ともDental AgeIIIAの時期であった. (2)全ての症例において, 側切歯歯胚発育遅延を認めた時の歯胚形成は歯冠1/2程度であった. この歯胚形成量は生後2~3年程度に相当し, 4~5年の歯胚の発育遅延を呈してい...

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Veröffentlicht in:小児歯科学雑誌 2010, Vol.48 (1), p.118-118
Hauptverfasser: 熊谷仁志, 熊谷淑子
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:緒言:小児歯科臨床において, 歯胚の発育遅延ならびにそれに起因した萌出遅延はよく経験するところである. 今回, 当院において比較的頻度が少ないと思われる上顎側切歯歯胚の著しい発育遅延を認めた4例を経験した. これらの症例について経過, 処置を含め, 若干の検討を加えた. 結果:(1)側切歯歯胚発育遅延を認めたのは, 7歳3か月から8歳10か月であり(平均7歳10か月), 4例ともDental AgeIIIAの時期であった. (2)全ての症例において, 側切歯歯胚発育遅延を認めた時の歯胚形成は歯冠1/2程度であった. この歯胚形成量は生後2~3年程度に相当し, 4~5年の歯胚の発育遅延を呈していると思われた. (3)4例中3例の先行乳歯が上顎乳側切歯と上顎乳中切歯の癒合歯であった. (4)全ての症例において, 先行乳歯は歯根吸収不全であり, 抜歯が必要であった. (5)4例中3例で発育遅延側切歯歯胚が他の歯牙の萌出を障害していると思われ, そのうち1例が同側中切歯, 2例が同側犬歯であった. (6)他の1例においては, 他の歯牙の萌出を全く障害せず, 現在, 歯胚の形成は歯冠完成まで進んでおり, 萌出方向も良好なため, 萌出が期待できる. (7)他の歯牙の萌出を障害していると思われた発育遅延側切歯歯胚を抜歯した症例においては, 萌出を障害されていた歯牙はすべて自然萌出であった. 考察:今回の症例を通じて, 上顎乳中切歯と乳側切歯の癒合歯は, 後継側切歯の歯胚発育遅延ならびに萌出遅延を発現することが多く, 注意深く経過を観察する必要性を感じた. また, 歯胚発育遅延をおこしている上顎側切歯歯胚に対しては, 他の歯牙の萌出を障害しているかどうかが抜歯の基準となるものと思われた. 一方, 全く他の歯牙の萌出を障害せず, 側切歯歯胚の発育遅延は著しいものの萌出方向が正常化している症例もあり, 発育遅延側切歯歯胚の抜歯は充分な経過観察期間をおいてから決定することが望ましいと考えられた.
ISSN:0583-1199