P-11 幼児の齲蝕罹患について

日本人小児の齲蝕罹患率は明瞭に低下している. 特に幼児においては顕著で, 厚生労働省が実施している3歳児歯科健康診査では, 2004年の調査結果で70%がcaries-freeであり, 一人平均の齲歯数が1.2となっている. このことは3歳までの小児の齲蝕罹患率を0(ゼロ)にするという目標が可能であるような印象を与える. しかし現実には, 複数歯の齲蝕を有する1歳児から, すべての乳歯が罹患している3歳児まで, この目標の困難さを示す症例にしばしば遭遇する. その多くが, 誤った授乳行為によって起こる哺乳齲蝕(nursing caries)に起因している. 大阪府吹田市では, 毎年3000名近...

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Veröffentlicht in:日本歯科学雑誌 2007, Vol.45 (1), p.167-168
Hauptverfasser: 苗村仁美, 野村良太, 山内理司, 桜井敦朗, 大嶋隆, 谷口学, 田淵真人, 西川直子
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:日本人小児の齲蝕罹患率は明瞭に低下している. 特に幼児においては顕著で, 厚生労働省が実施している3歳児歯科健康診査では, 2004年の調査結果で70%がcaries-freeであり, 一人平均の齲歯数が1.2となっている. このことは3歳までの小児の齲蝕罹患率を0(ゼロ)にするという目標が可能であるような印象を与える. しかし現実には, 複数歯の齲蝕を有する1歳児から, すべての乳歯が罹患している3歳児まで, この目標の困難さを示す症例にしばしば遭遇する. その多くが, 誤った授乳行為によって起こる哺乳齲蝕(nursing caries)に起因している. 大阪府吹田市では, 毎年3000名近い幼児(1歳6か月児, 2歳6か月児, 3歳6か月児)を対象にして歯科健診が行われている. 1997年と2005年に行われた調査結果を比較すると, 1歳児の一人平均齲歯数の減少率は3歳児よりも小さく, 哺乳齲蝕の重要性が示唆された. 哺乳齲蝕は上顎切歯口蓋側歯面の脱灰から始まることから, 2002年に3歳児歯科健診を受けた2802名を調べたところ, 40名に上顎切歯口蓋側歯面の齲蝕を認めた. この3歳児について, その2年前の調査結果を調べると, その12名に夜間寝る前の授乳あるいは哺乳瓶の使用が認められ, 哺乳齲蝕の発生頻度は0.43%と推定された. 平成17年度厚生労働省乳幼児栄養調査の結果をみると, 10年前に比べて, 離乳食の開始時期と完了時期が共に遅くなる傾向を示しており, 哺乳齲蝕予防の難しさを示している. しかし, 哺乳齲蝕は, 上顎切歯口蓋側歯面の脱灰という初期段階で発見し, 夜間の授乳を辞めさせれば, 齲蝕の進行だけでなく再石灰化も期待できることから, 1歳6か月児歯科健診における哺乳齲蝕の発見は非常に重要と考えられる.
ISSN:0583-1199