3 複数歯に特発性歯冠吸収を認めた一症例

「緒言」:萌出前, あるいは萌出直後の歯の歯冠部に限局したエックス線透過性の歯質の欠損について, われわれは, 経年資料から, 永久歯の歯冠完成後, 萌出までの間に特発性歯冠吸収によって生じたと考えられる二症例について報告した1). そのうちの一症例で, その後, 複数の歯に進行性の歯冠部歯質の欠損が生じたので, その詳細について報告する. 「症例」:患児は6歳時に前歯部開咬を主訴に当科を来院し, 定期的管理を受けている男児で, 全身既往歴および家族歴に特記事項はない. 初診時エックス線所見では下顎左側側切歯の歯胚の欠如を認めた以外, 永久歯歯胚の形成状態に異常を認めなかった. 「経過」:8歳...

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Veröffentlicht in:小児歯科学雑誌 2005, Vol.43 (1), p.124-125
Hauptverfasser: 畑弘子, 曽根信哉, 真柳秀昭, 阿部真紀
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:「緒言」:萌出前, あるいは萌出直後の歯の歯冠部に限局したエックス線透過性の歯質の欠損について, われわれは, 経年資料から, 永久歯の歯冠完成後, 萌出までの間に特発性歯冠吸収によって生じたと考えられる二症例について報告した1). そのうちの一症例で, その後, 複数の歯に進行性の歯冠部歯質の欠損が生じたので, その詳細について報告する. 「症例」:患児は6歳時に前歯部開咬を主訴に当科を来院し, 定期的管理を受けている男児で, 全身既往歴および家族歴に特記事項はない. 初診時エックス線所見では下顎左側側切歯の歯胚の欠如を認めた以外, 永久歯歯胚の形成状態に異常を認めなかった. 「経過」:8歳6か月時に定期診査で来院した際, 萌出中の上顎右側中切歯歯冠の一部に実質欠損を認めた. この所見および経過については報告済みである1). 10歳11か月時, 定期検診で来院した際, 下顎右側側切歯唇面近心側の歯頸部よりに, Pink spot lesionを発見した. エックス線診査で, 近心エナメル質直下に, 15mm×3mm程のエックス線透過像を認めた. 経過観察後, 12歳1か月時には, 透過像部の拡大を認めた. 浸潤痲酔, ラバーダム防湿下で, 唇面のピンク色の部分より開拡した. 内容物は, 血液を含む粗な軟組織だったが, 大半はタービン使用時に流出し, 搾取できなかった. 唇面歯頸部側のエナメル質内に外部と交通している小孔を認めた. さらに, 10歳11か月時のパノラマエックス線写真で未萌出下顎左側第2小臼歯の咬合面遠心小窩直下の象牙質に直径1mm程のエックス線透過像を発見した. 12歳0か月時には, 透過像部の拡大を認めた. 浸潤痲酔下で, 先行乳歯を抜去し, 第2小臼歯の咬合面を露出させた. 遠心小窩の下に線状の欠損が広がり, そこに軟組織が入り込んでいた. エナメル質を1mm程開拡すると, 歯質の欠損部へ達した. 内容物は, 血液を含む非常に粗な軟組織であった. いずれの歯も間接覆髄後, 歯冠修復処置を行ったが, 問題なく経過している. 「考察」:いずれの歯も, 経過, 処置時所見から歯冠の石灰化後に, エナメル質表面の微細な欠損部から軟組織が入り込み, 歯冠部象牙質の吸収が生じたと考えられる. 「文献」:1)阿部真紀, 畑弘子, 金田一孝二, 真柳秀昭:永久歯に特発性歯冠吸収を起こしたと思われる二例, 小児歯誌, 39, 231-237, 2001
ISSN:0583-1199