A-1 猫ひっかき病の1例

今回われわれは顎口腔領域では比較的まれな猫ひっかき病が13歳女児に発症した症例を経験したので, その概要を報告した. 診断には腫脹した顎下リンパ節から穿刺吸引した膿に対してPCR法を用いてBartonella henselaeを検出し, 確定診断を得ることができた. 「症例」:患者は13歳女児. 平成13年1月22日右側顎下部の腫脹を主訴に当科受診. (既往歴) 特記事項はないが, 猫を飼育し, ひっかき傷が絶えない. (家族歴) 平成12年末ごろから弟が左手と左上腕部の腫脹のため他施設で精査中. (現病歴) 1週間前にA矯正歯科医院で上顎拡大装置を装着したが, その後右側顎下部が腫脹し, 近...

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Veröffentlicht in:小児歯科学雑誌 2002, Vol.40 (1), p.224-224
Hauptverfasser: 村山高章, 川上峰世, 久富麻理, 瀧野雅文, 青井陽子, 堀智範, 村上旬平, 秋山茂久, 天野敦雄, 森崎市治郎
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:今回われわれは顎口腔領域では比較的まれな猫ひっかき病が13歳女児に発症した症例を経験したので, その概要を報告した. 診断には腫脹した顎下リンパ節から穿刺吸引した膿に対してPCR法を用いてBartonella henselaeを検出し, 確定診断を得ることができた. 「症例」:患者は13歳女児. 平成13年1月22日右側顎下部の腫脹を主訴に当科受診. (既往歴) 特記事項はないが, 猫を飼育し, ひっかき傷が絶えない. (家族歴) 平成12年末ごろから弟が左手と左上腕部の腫脹のため他施設で精査中. (現病歴) 1週間前にA矯正歯科医院で上顎拡大装置を装着したが, その後右側顎下部が腫脹し, 近医B歯科医院で当科を紹介された. (現症) 全身状態は体格中等度, 栄養状態良好, 体温36.9℃. 局所では, 右側下顎角付近の顎下部にクルミ大, 弾性やや硬の腫脹, 局所熱感と圧痛を認めた. 右側眼窩下部に, 掻破したと推定される薄い茶褐色の痂皮付着と紅暈を伴った径7~8mmの創を認めた. 口腔粘膜, 歯, 唾液腺に異常を認めなかった. (臨床検査成績) ALP 382とやや高値を示した以外, 異常値を認めなかった. (エックス線所見) 歯・顎骨に特に疾患像は認めなかった. (処置および経過) 初診時, 顎下部膿瘍の臨床診断にて口腔外切開し排膿. 細菌培養検査施行したが, 結果は陰性. FMOXを2日間点滴投与. 症状改善乏しく, 猫ひっかき病を疑いはじめ, 三日目に抗生剤をMINO内服に変更. 腫脹部を穿刺, 極少量の膿を吸引し, 検体として冷凍保存. MRIにて右側顎下部リンパ節腫脹を確認. その後も著変がないまま, 患者都合により転医. 冷凍保存しておいた膿に対してPCRを用いたところB. henselaeが検出され, 確定診断を得た. 患者は転医先でMINO継続投与され, 症状改善した. (考察) 培養検査では同定できないほどの極少数の細菌や, 死菌でも同定できる感度の高いPCR法は, 血清抗体価測定より確実と思われ, 猫ひっかき病の診断に有用と考えられた.
ISSN:0583-1199