P-12 歯冠破折片再接着法の12年経過例

永久歯の歯冠破折症例では, 破折片を持参することがあり, 破折片の再接着が行われている. 再接着法の利点として, 歯冠の形態, 表面性状, 色調が完全に復元でき, 咬耗・摩耗速度が隣在歯と同じであり, 修復時間も短いことが上げられる. さらに, 他の人工物による修復法と違って患児や保護者にとっては歯が元に戻ったという心理的な満足感がある. 破折片を再接着する試みは, 初期には手技に関する信頼性が低く, 長期にわたる成功の真偽は不確かなものであったが, 1980年代に新しい象牙質ポンディング剤が開発されてから, 一躍歯冠破折片再接着法は信頼できる処置として認められるようになってきた. しかし,...

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Veröffentlicht in:小児歯科学雑誌 2001, Vol.39 (3), p.781-781
Hauptverfasser: 北岡裕子, 福留麗実, 山内理恵, 有田憲司, 西野瑞穗
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:永久歯の歯冠破折症例では, 破折片を持参することがあり, 破折片の再接着が行われている. 再接着法の利点として, 歯冠の形態, 表面性状, 色調が完全に復元でき, 咬耗・摩耗速度が隣在歯と同じであり, 修復時間も短いことが上げられる. さらに, 他の人工物による修復法と違って患児や保護者にとっては歯が元に戻ったという心理的な満足感がある. 破折片を再接着する試みは, 初期には手技に関する信頼性が低く, 長期にわたる成功の真偽は不確かなものであったが, 1980年代に新しい象牙質ポンディング剤が開発されてから, 一躍歯冠破折片再接着法は信頼できる処置として認められるようになってきた. しかし, Andreasenらのスカンジナビアの調査やその他の報告によって, 破折片の保持率は5年でほぼ50%であることが示されており, 歯冠破折片再接着法の信頼性はまだまだ十分とは言えないのが現状である. 我々は, 長期保持率の向上を目的として, 破折片の接着に化学重合型の低粘調性のコンポジットレジン(クリアフィルSC-II(R))を用い, さらに破折線に沿って光重合型コンポジットレジンで補強する方法を考案した. 今回その方法を実施し, 12年経過した症例を報告した. 「症例」:8歳3か月時に小学校で転倒して右側上顎中切歯の歯冠中央部で破折し近医を受診する. 近医での今後は抜髄してポストクラウンを装着するという治療法に保護者が疑問を感じて当科を受診. 当科で生切後破折片の接着を行い, その後20歳5か月まで定期的に予後観察を行った. 「結果」:12年間という長期間にわたる経過観察の中で, 1度も形態修正をおこなわず, 現在やや破折片が黄色に変化している程度で患者は非常に満足している. 歯根形成も正常に行われ, 歯髄への影響も認められなかった. 齲蝕の発生もなく, 冷水痛などの自覚症状を訴えたこともない. 術後3年後に再度上顎前歯部を打撲した際も, 破折片を接着した歯ではなく隣在する天然歯が破折しており, 強度的にも十分であるといえる. 以上のことから, 破折片接着法は歯冠破折歯にとって非常に有効な処置の一つであると評価できる.
ISSN:0583-1199