吸啜運動時の舌・下顎運動の計測

エックス線被爆が非常に少ないエックス線テレビ撮影装置で,9か月乳児の吸啜運動を観察した。喉頭蓋と軟口蓋は接していなかったが,吸啜中鼻咽腔は開放された状態を保っていた。吸啜運動時,舌は明確な波状運動を呈し,その中央部が大きく陥凹していた。舌中央部の最大振幅は5.6mmと大きかった。これに対し,下顎の上下的変位量は非常に小さく,舌骨が前上方位に固定されていたことから,舌骨上筋群の下顎を開口させる働きは作用しにくくなっており,この結果,下顎位は安定していると考えられた。乳首の圧迫状態については,閉口時にも乳首の頸部付近が乳前歯部により圧迫されるが,乳首全体としては舌中央部の陥凹している間,舌前方部に...

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Veröffentlicht in:小児歯科学雑誌 1997/09/25, Vol.35(4), pp.605-612
Hauptverfasser: 蓜島, 弘之, 蓜島, 桂子, 野田, 忠
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:エックス線被爆が非常に少ないエックス線テレビ撮影装置で,9か月乳児の吸啜運動を観察した。喉頭蓋と軟口蓋は接していなかったが,吸啜中鼻咽腔は開放された状態を保っていた。吸啜運動時,舌は明確な波状運動を呈し,その中央部が大きく陥凹していた。舌中央部の最大振幅は5.6mmと大きかった。これに対し,下顎の上下的変位量は非常に小さく,舌骨が前上方位に固定されていたことから,舌骨上筋群の下顎を開口させる働きは作用しにくくなっており,この結果,下顎位は安定していると考えられた。乳首の圧迫状態については,閉口時にも乳首の頸部付近が乳前歯部により圧迫されるが,乳首全体としては舌中央部の陥凹している間,舌前方部により持続的に圧迫されることが確認された。舌前方部の乳首の持続的圧迫は,乳汁を圧搾する作用のほかに,舌前方部を固定することによって舌中央部の陥凹形成を容易にするための働きがあると考えられた。また,前方部を舌と口唇で乳首をパッキングし,後方部を舌根部と軟口蓋で閉鎖して,口腔を一つの閉鎖腔としていることが確認された。吸啜圧の大きな変動は,大きく素早い舌の波状運動が乳児の小さな閉鎖された口腔内で生じることによると考えられた。下顎と,舌骨が安定し,舌前方部の乳首への圧迫が同時に起こることによって,舌中央部の陥凹形成が生じやすくなっている可能性が示唆された。
ISSN:0583-1199
2186-5078
DOI:10.11411/jspd1963.35.4_605