5 悪習癖による口腔軟組織潰瘍の3症例

悪習癖を原因とする口腔軟組織潰瘍を3例経験し, 習癖の矯正を指導するほかに創部の清潔保持及び保護床補助装置の活用により良好な成績が得られた. 1症例目は6歳男児, 2か所の齲蝕が関与する弄舌癖による舌潰瘍があり, 齲蝕の処置を行った結果潰瘍は次第に消退した. 2症例目は10歳男児で咬唇癖に起因する下唇潰瘍があり, シリコン製の咬唇防止装置を装着させ装着後48日で完全治癒に至ったが, とってかわって新たに口唇周囲をなめる習癖が出現していた. 3症例目は12歳男児で咬唇癖に起因する下唇潰瘍があり, 診察時患児は無意識に創部を噛んでいるのが観察されたため, レジン製の咬唇防止装置を装着させ装着後7日...

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Veröffentlicht in:小児歯科学雑誌 1997, Vol.35 (1), p.162-162
Hauptverfasser: 後藤和久, 堀智範, 村山高章, 岩坪玲子
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:悪習癖を原因とする口腔軟組織潰瘍を3例経験し, 習癖の矯正を指導するほかに創部の清潔保持及び保護床補助装置の活用により良好な成績が得られた. 1症例目は6歳男児, 2か所の齲蝕が関与する弄舌癖による舌潰瘍があり, 齲蝕の処置を行った結果潰瘍は次第に消退した. 2症例目は10歳男児で咬唇癖に起因する下唇潰瘍があり, シリコン製の咬唇防止装置を装着させ装着後48日で完全治癒に至ったが, とってかわって新たに口唇周囲をなめる習癖が出現していた. 3症例目は12歳男児で咬唇癖に起因する下唇潰瘍があり, 診察時患児は無意識に創部を噛んでいるのが観察されたため, レジン製の咬唇防止装置を装着させ装着後7日で軽快に至った. Kleinmanらが1986年から1987年のあいだに合衆国の5歳から17歳の学童39,206人を対象に行った口腔粘膜疾患の調査では4%の児童が調査時に口腔粘膜疾患に罹患しており, cheek/lip biteは0.3%未満にしかみられなかったが習癖によるものなのかどうかは不明である. 黒須, 福田らは内田らとの著書の中で『小児の口腔習癖とその行動』について発現環境はなぜかわからないとしながらも親子関係の中で母親の'非干渉''過干渉'の2タイプでは口腔習癖が重篤化していくと言及している. 口腔習癖にとどまらず小児の悪習癖は, その行動の原因に何らかの精神的ストレスが強く関与している場合が多い. 今回の3例のうち症例2, 症例3については, 我々の見ている限り母親の強度の干渉がみられた. 我々は, 日常臨床の場面でその疾患の治療に加え, 背景にあるであろうストレッサーについても考慮すべきであると考える.
ISSN:0583-1199