7 全身および口腔に症状をくりかえした頬粘膜咬傷の難治症例
口腔粘膜疾患は, 重篤な全身症状をひきおこすことがある. 患児は初診時8歳10か月の男児で, 左右両側の後臼歯部頬粘膜の穿孔・疼痛から全身症状に波及し, 1か月以上の入院をしていた. 上顎第一大臼歯の捻転のため後臼歯部頬粘膜をかみやすい状態ではあったが, 下顎を左右に動かして故意に噛んだり, 舌や指で患部を刺激することを繰り返したことが, 長期入院の原因であった. 退院後4日目に, 本院を紹介され来院した. 全身症状はなかったが, 未だ学校に通っておらず, 鎮痛薬を常用していた. 多動・多弁で落ち着きのない態度で, 情緒不安定だった. 穿孔部は治癒傾向にあったが, 5~7mmの深さで, 開口時...
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Veröffentlicht in: | 小児歯科学雑誌 1995, Vol.33 (1), p.232-232 |
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Hauptverfasser: | , , , , |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 口腔粘膜疾患は, 重篤な全身症状をひきおこすことがある. 患児は初診時8歳10か月の男児で, 左右両側の後臼歯部頬粘膜の穿孔・疼痛から全身症状に波及し, 1か月以上の入院をしていた. 上顎第一大臼歯の捻転のため後臼歯部頬粘膜をかみやすい状態ではあったが, 下顎を左右に動かして故意に噛んだり, 舌や指で患部を刺激することを繰り返したことが, 長期入院の原因であった. 退院後4日目に, 本院を紹介され来院した. 全身症状はなかったが, 未だ学校に通っておらず, 鎮痛薬を常用していた. 多動・多弁で落ち着きのない態度で, 情緒不安定だった. 穿孔部は治癒傾向にあったが, 5~7mmの深さで, 開口時疼痛があった. 上顎に即時重合レジン製の咬合挙上板を装着した. 両側CDEの咬合面全体と, 第一大臼歯は舌側咬頭だけを被覆して頬側咬頭を接触させないようにした. その後, 潰瘍は軽快し, 食欲も回復し, 平常の生活を取り戻した. 上顎中切歯の萌出に伴い, 咬合挙上板をはずしたが, その後, 舌尖, 右側舌縁, 下口唇を次々と噛んでは潰瘍をつくった. 右側乳臼歯の動揺がきっかけとなり, 右側乳臼歯部頬粘膜を噛み, 何度も患部を噛んだりすいついたため, 感染し, 発熱, 右顔面腫脹, 脱水症状をおこした. 抗生物質と栄養剤を点滴し, 軟性レジンスプリントを装着した. その結果, 入院せずに治癒の経過をたどった. 咬傷の誘因は歯列や歯の交換に伴う問題であったが, 自傷的な口腔の動きによって全身症状に波及することとなった. 患児は知的障害や不随意運動などはなく, 心理的・環境的要因から派生した心因性障害が, 自傷的行為の原因である可能性があった. 対症療法だけでは今後も同じことが繰り返されると思われ, 心療内科の受診をすすめた. 頬粘膜の潰瘍には, 咬合挙上板と, 軟性レジンスプリントが有効であったが, 成長期の場合, 長期間の使用とならないよう注意が必要であった. |
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ISSN: | 0583-1199 |