6 乳歯の歯内療法の予後について

乳歯は解剖学的形態や歯根吸収など, 永久歯とは異なる特徴を持ち, それが乳歯の歯内療法の困難さを招いていると言われている. 今回, 演者らは岩手医科大学小児歯科外来において, 昭和55年から平成2年までの10年間に行った748歯の乳歯歯内療法について, その予後を調査したので報告した. 調査対象の内訳は, 直接歯髄覆髄177歯, 生活歯髄切断80歯, 直接抜髄210歯, 感染根管治療281歯であった. 直接歯髄覆髄での予後良好例は78%であった. 予後不良例では, その2/3において処置後1年以内に症状が出現していた. また, 予後不良例の半数以上が直接抜髄へ移行していた. 一方, 生活歯髄切...

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Veröffentlicht in:小児歯科学雑誌 1992, Vol.30 (3), p.660-660
Hauptverfasser: 長谷川淳子, 野坂久美子, 守口修, 印南洋伸, 甘利英一
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:乳歯は解剖学的形態や歯根吸収など, 永久歯とは異なる特徴を持ち, それが乳歯の歯内療法の困難さを招いていると言われている. 今回, 演者らは岩手医科大学小児歯科外来において, 昭和55年から平成2年までの10年間に行った748歯の乳歯歯内療法について, その予後を調査したので報告した. 調査対象の内訳は, 直接歯髄覆髄177歯, 生活歯髄切断80歯, 直接抜髄210歯, 感染根管治療281歯であった. 直接歯髄覆髄での予後良好例は78%であった. 予後不良例では, その2/3において処置後1年以内に症状が出現していた. また, 予後不良例の半数以上が直接抜髄へ移行していた. 一方, 生活歯髄切断では予後良好例が最も少なく, 63.8%であった. 予後不良例では, そのうちの半数以上が抜歯へ移行していた. また, 症状発現までの期間は直接歯髄覆髄よりも幅広い期間にわたっていた. 直接抜髄での予後不良例は最も多く, 85.8%であった. また, 予後不良例では2/3が抜歯となり, 他は感染根管へ移行していた. 症状発現までの経過年数は他の歯内療法の予後不良例よりも長く, 3年以上のものが多くなっていた. 感染根管治療の予後良好例は前歯部や下顎乳臼歯部では80%台であったが, 上顎乳臼歯部では70%前後であった. また, 症状発現までの期間は6ヵ月から5年で, バラツキが大きかった. 以上の結果より, 予後不良は直接歯髄覆髄では直接抜髄へ, 生活歯髄切断では抜歯へ移行するものが多く, 乳歯歯髄炎の進行の速さを物語っていた. また, 予後不良までの経過年数は, 前歯部より後方歯に行くに従い長くなっていたが, その期間はどの処置においても全体的に3年から5年の経過のものが多かった. これらの期間は, 歯内療法の予後観察の期間として, 一つの目安になると考えられた.
ISSN:0583-1199