気管支異物として摘出された下顎乳中切歯

脳性麻痺に罹患しており,気管切開を受けている3歳10カ月の女児が脱落した下顎右側乳中切歯を誤嚥し,その後無症状に経過していた.当該歯は偶然に撮影された胸部X線写真上で発見され,吸引によって気管支より摘出された.この下顎乳中切歯について,実体顕微鏡,光学顕微鏡による観察を行った.これらの観察により,以下の結果を得た. 1.下顎乳中切歯には歯根吸収がみられた.歯根吸収の程度は推定される下顎乳中切歯の歯根長の約2/3に及んでいた.この歯根吸収面の形態は明らかに生理的歯根吸収の場合と異なっていた.下顎乳切歯の生理的歯根吸収では,根尖側領域の舌側面から吸収されるため,舌側での吸収が唇側に対して常に進んだ...

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Veröffentlicht in:小児歯科学雑誌 1991/12/25, Vol.29(4), pp.824-828
Hauptverfasser: 高見, 澤豊, 大森, 郁朗
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:脳性麻痺に罹患しており,気管切開を受けている3歳10カ月の女児が脱落した下顎右側乳中切歯を誤嚥し,その後無症状に経過していた.当該歯は偶然に撮影された胸部X線写真上で発見され,吸引によって気管支より摘出された.この下顎乳中切歯について,実体顕微鏡,光学顕微鏡による観察を行った.これらの観察により,以下の結果を得た. 1.下顎乳中切歯には歯根吸収がみられた.歯根吸収の程度は推定される下顎乳中切歯の歯根長の約2/3に及んでいた.この歯根吸収面の形態は明らかに生理的歯根吸収の場合と異なっていた.下顎乳切歯の生理的歯根吸収では,根尖側領域の舌側面から吸収されるため,舌側での吸収が唇側に対して常に進んだ形態を示すことが多いが,被検歯では,根尖からの歯根吸収が歯根外側から進み,その結果,根管をとりまく歯質が根尖方向に突出した形態となっていた. 2.歯根吸収の原因となるような齲蝕や咬耗は認められなかった. 3.根管壁の一部に内部吸収を思わせる像が若干認められた. 誤嚥事故の予防の観点から,心身障害児では,誤嚥しやすい動揺のある歯,例えば脱落期にある乳歯,あるいは本症例のように異常な歯根吸収のみられる歯は,早期に抜歯する必要があると思われた.
ISSN:0583-1199
2186-5078
DOI:10.11411/jspd1963.29.4_824