10 乳歯エナメル質新産線の結晶性について

乳歯および第一大臼歯のエナメル質, 象牙質中に見られる新産線は, 出生直後の発育環境の変動により生じる発育障害を伴う成長線と言われている. 乳歯エナメル質新産線についてその組織学的, 形態学的な検討は従来より行われ, 透過光線を通して暗く見える新産線はエナメル小柱鞘の肥厚と小柱走向の屈曲が見られ, 石灰化度の低い線条であると報告されている. また新産線と齲蝕との関連について種々報告されているが, 現在のところ, 齲蝕成立の意義はあまりないと考えられている. しかし, 齲蝕との関連を知る場合, 演者らは従来の報告に加え, 歯質アパタイトの化学的な安定さの要因である結晶性について検討することが重要...

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Veröffentlicht in:小児歯科学雑誌 1990, Vol.28 (1), p.271-271
Hauptverfasser: 堀川容子, 棚瀬精三, 若松紀子, 森崎治子, 加藤陽子, 成田優一, 吉田定宏
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:乳歯および第一大臼歯のエナメル質, 象牙質中に見られる新産線は, 出生直後の発育環境の変動により生じる発育障害を伴う成長線と言われている. 乳歯エナメル質新産線についてその組織学的, 形態学的な検討は従来より行われ, 透過光線を通して暗く見える新産線はエナメル小柱鞘の肥厚と小柱走向の屈曲が見られ, 石灰化度の低い線条であると報告されている. また新産線と齲蝕との関連について種々報告されているが, 現在のところ, 齲蝕成立の意義はあまりないと考えられている. しかし, 齲蝕との関連を知る場合, 演者らは従来の報告に加え, 歯質アパタイトの化学的な安定さの要因である結晶性について検討することが重要であると考え, 微小な部分の結晶性を評価できる微小焦点X線回析法により乳歯エナメル質新産線および出生前, 後エナメル質の結晶性を比較検討した. (方法) 光学顕微鏡野で, エナメル質新産線が明瞭に観察される上顎乳中切歯を実験に用いた. 試料用切片として歯軸方向で頬舌的な切片(厚さ約50μm)を作成した. 微小焦点X線回折装置(Rotaflex, 理学電機社製)を用いて直径10μmのX線ビームをエナメル質新産線および, 隣接する出生前, 後エナメル質に照射してマイクロラウエ写真を撮影した. 得られたマイクロラウエ写真より, a軸方向として(310)回折線を, c軸方向として(002)回折線を選択し, マイクロデンシトメーターによりチャート化し, その半価巾値を比較することにより結晶性を評価した. (結果) a軸方向, c軸方向ともに, 出生後エナメル質の結晶性が最も高い傾向を認め, 次いで新産線, 出生前エナメル質の順であり, 新産線部分が特に結晶性が低いという結果は認められなかった. このことより, 乳歯エナメル質新産線は, 結晶性という側面から齲蝕成立に意義を示さないことが示唆された.
ISSN:0583-1199