24 亜砒酸糊剤の乳臼歯への誤った使用が引き起こしたと思われる障害症例

乳歯々髄の失活に亜砒酸糊剤を使用することは, 下記のごとき理由から, 原則として使用を避けるべきであると思います. 1)小児は突発的な発熱その他の理由で来院日時を守り難く, したがって糊剤の貼付時間を厳守しにくい. 2)小児の口腔は唾液分泌が多く, 糊剤貼付後の仮封が不完全になり易い. 3)乳歯々質は, 永久歯に比べて薬剤の滲透が早く, それ故に髄床底からの滲透を生じ易い. 4)乳歯の根尖孔は広く, 後継永久歯胚に障害を及ぼし易い. さらに乳臼歯に亜砒酸糊剤を貼付し, 放置した場合の糊剤の滲透及び障害の経路としては, 次のごときものが考えられます. 1)根管を通じ, 根尖付近および永久歯胚に障...

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Veröffentlicht in:小児歯科学雑誌 1985, Vol.23 (1), p.274-274
Hauptverfasser: 中野育子, 浜野良彦
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:乳歯々髄の失活に亜砒酸糊剤を使用することは, 下記のごとき理由から, 原則として使用を避けるべきであると思います. 1)小児は突発的な発熱その他の理由で来院日時を守り難く, したがって糊剤の貼付時間を厳守しにくい. 2)小児の口腔は唾液分泌が多く, 糊剤貼付後の仮封が不完全になり易い. 3)乳歯々質は, 永久歯に比べて薬剤の滲透が早く, それ故に髄床底からの滲透を生じ易い. 4)乳歯の根尖孔は広く, 後継永久歯胚に障害を及ぼし易い. さらに乳臼歯に亜砒酸糊剤を貼付し, 放置した場合の糊剤の滲透及び障害の経路としては, 次のごときものが考えられます. 1)根管を通じ, 根尖付近および永久歯胚に障害を及ぼす. 2)髄床底から根分岐部直下の歯槽骨に直接滲透し障害を及ぼす. 3)仮封部からの漏洩によって, 歯肉に障害を及ぼす. ところが本方法は古くから使用されてきた方法で, 診療時間の短縮が出来るという理由から, 今なお一部の歯科医の間で用いられているようです. 今回, 九州大学歯学部小児歯科を訪れた小児患者の中に, 乳臼歯の歯髄処置に亜砒酸を用いられたことが原因で, 障害を被ったと思われる2症例に遭遇しましたので, 乳歯に亜砒酸を用いる場合の危険性について, 注意を喚起する意味で, 報告しました.
ISSN:0583-1199