78 縄文時代人の顎顔面形態

咬合の小進化に伴い, 歯と顎骨の不調和すなわちdiscrepancyが増大してきていることが指摘されている. 演者らはこの経過を知るため, 縄文時代人までさか上り古人骨の側貌頭部X線規格写真を計測し, 線計測によって顔面の高さと深さ, および下顎骨の大きさを分析した. また角度計測によって上下顎の前後関係と傾斜, 上下顎前歯の軸傾斜を分析した. この計測結果を亀谷らによる鎌倉時代人と室町時代人および清野らによる現代人と比較した. その結果, skeletal patternに関しては, 上顎骨には縄文時代人から現代人にいたるまで変化は少いが, 中世以後に縮少の傾向が強かった. 下顎骨では顎角部...

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Veröffentlicht in:小児歯科学雑誌 1981, Vol.19 (1), p.240-241
Hauptverfasser: 塩野幸一, 伊藤学而, 犬塚勝昭, 植原和郎
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:咬合の小進化に伴い, 歯と顎骨の不調和すなわちdiscrepancyが増大してきていることが指摘されている. 演者らはこの経過を知るため, 縄文時代人までさか上り古人骨の側貌頭部X線規格写真を計測し, 線計測によって顔面の高さと深さ, および下顎骨の大きさを分析した. また角度計測によって上下顎の前後関係と傾斜, 上下顎前歯の軸傾斜を分析した. この計測結果を亀谷らによる鎌倉時代人と室町時代人および清野らによる現代人と比較した. その結果, skeletal patternに関しては, 上顎骨には縄文時代人から現代人にいたるまで変化は少いが, 中世以後に縮少の傾向が強かった. 下顎骨では顎角部を中心にした著明な縮少が生じていた. 縄文時代以降の食生態の変化があったことを示しているが, とくに鎌倉時代以降において急激であったことがうかがわれる. 上顎骨は下顎骨に比較して著明な変化がなかったが, これは呼吸機能との関連や, 頭蓋底と直かに連結していることなどから, 縮少の程度は少いからと思われた. Denture patternについては, 上下顎前歯とも, 縄文時代人から鎌倉時代人までの間に唇側へ傾斜し, ほぼ現代人の値に達していた. このことから現代人における叢生と前歯の前傾は, 歴史的にみれば, 顎骨の縮少に伴ってまず前歯の唇側傾斜として表れ, その後叢生が追加されたことを示していると考えられる.
ISSN:0583-1199