76 多数乳歯の萌出異常の一症例

乳歯の萌出は生後約6ヵ月から2年半の間に行なわれる. しかし, 萌出時期は個体差が大きく, 時にはその範囲を越え萌出が著しく遅延したり埋伏で萌出をみない事もある. 今回我々は本学小児歯科を受診した3歳1ヵ月の女児に多数乳前歯の萌出異常を観察したので若干の考察を加え報告した. 患児は昭和52年1月28日生まれの女児でB|B/BA|ABの萌出遅延を主訴とし本学小児歯科を受診した. 家族歴として母親の訴えでは, 母方の従兄に, 2歳頃乳臼歯部より萌出を開始し, 3歳頃までにATAの萌出を最後に, 全乳歯萌出を完了した者がいる. 既往歴として, 生下時体重2700g, 身長49cmにて満期出産. 妊娠...

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Veröffentlicht in:小児歯科学雑誌 1980, Vol.18 (2), p.450-450
Hauptverfasser: 秋山育也, 安永満, 峰松小百合, 大西雄三, 長坂信夫
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Zusammenfassung:乳歯の萌出は生後約6ヵ月から2年半の間に行なわれる. しかし, 萌出時期は個体差が大きく, 時にはその範囲を越え萌出が著しく遅延したり埋伏で萌出をみない事もある. 今回我々は本学小児歯科を受診した3歳1ヵ月の女児に多数乳前歯の萌出異常を観察したので若干の考察を加え報告した. 患児は昭和52年1月28日生まれの女児でB|B/BA|ABの萌出遅延を主訴とし本学小児歯科を受診した. 家族歴として母親の訴えでは, 母方の従兄に, 2歳頃乳臼歯部より萌出を開始し, 3歳頃までにATAの萌出を最後に, 全乳歯萌出を完了した者がいる. 既往歴として, 生下時体重2700g, 身長49cmにて満期出産. 妊娠中の母体, 出生後の患児の全身状態に特に異常は認められない. 現在患児は体重13000g, 身長89.5cmで, 全身的発育栄養状態に異常は認められない. 口腔内所見はDCA|ACD/DC|CDの萌出をみており, その萌出時期及び順序については, 1歳8ヵ月頃DTDより萌出を開始した事以外は明らかではない. DTDの小窩にウ蝕を認める他, 歯牙硬組織に異常は認められない. 上唇小帯及び上顎頬小帯の肥厚, ETE相当部の歯肉の膨隆の他, 口腔軟組織に異常は認められない. 歯冠及び歯列の計測値は平均に比べ小さい. 咬合状態で下顎が左方に偏位し, 歯牙対合関係に不正を認める. レントゲン所見として, 乳歯に歯数の異常はなくB|B/BA|ABは顎骨内, E|E/E|Eは粘膜下に認め, 歯根の形成状態に遅延を認める. 永久歯は75|57/5|5以外の歯胚を認め, 形態及び形成状態に異常は認められない. 頭部X線規格写真により顔面頭蓋の発育状態の検討を行ない, 咬合不正によると思われる下顎骨の位置の異常と, 下顎角の大きい事が認められた. 本症例は, 多数乳歯に萌出異常をきたしている事から, 全身的原因さらに局所的原因も加え検討を行なったが, 現在のところ明らかにできなかった. 今後観察を続ける予定である.
ISSN:0583-1199