11 萌出途中の6歳臼歯の管理

6歳臼歯の重要性はいつもいわれていることですが, 反面ムシ歯に対して最も弱い歯でもあります. 私達が子供の患者さんの口腔内を定期検診のたびごとに見て感じてきたことの1つに, 乳歯のムシ歯の処置が完全になされてその後のプラークコントロールもほぼできていると思われる患者さんでも, 6歳臼歯が萌出を完了した時点ですでに初期のムシ歯になっていることです. このことから私達の所属している長野県百合の会では6歳臼歯をムシ歯から防ぐため1本ずつ6歳臼歯の管理が必要ではないかと考え6歳臼歯管理手帳を発行し萌出開始から完了まで観察しております. その結果, 萌出時期のちがいや, 萌出期間の長短などいろいろなケースを見ることができました. 6歳臼歯は萌出開好から完了までどのくらいの日数を要するのか成書にも定かではありませんが, 私達の観察した症例では, 短いものは20日ぐらいから長いものは7ヵ月以上もかかることがわかりました. 一般に上顎は萌出の期間が短く, 下顎は長い傾向があるようです. 6歳臼歯の萌出に対応して, できるだけ短い間隔でリコールをくり返し細かい管理を行なうように努めていますが, 咬合面の歯肉弁がなかなか消失しない症例に対しては, 歯肉弁の切除も行っています. 萌出が完了すればシーラントという手段もありますので, それまでの間を何んとかもちこたえさせる方法として, 私達は以上のような6歳臼歯管理手帳による細かい管理を行うよう努めています.