36 レザーマイクロプローブによる乳歯表層エナメル質の研究(第2報)

歯質に微量に存在する元素, すなわちtrace elementsについては, 近年, 各種の微量化学分析法の開発およびその歯科分野への導入に伴い, その研究報告が行われるようになってきた. 我々は歯質の性状と齲蝕罹患性との関係を主題として, その手がかりを歯質の化学組成に求めることを企て, レーザマイクロプローブを用いて, 歯質に局在するtrace elementsの分布についての研究を行っている. 前回は, 乳歯表層エナメル質中のtrace elementsの定性ならびに半定量分析を行い, Mn, Fe, Sn, Si, Al, Cu, Zn, Ti, Ni, Srの各微量元素を同定, その...

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Veröffentlicht in:小児歯科学雑誌 1976, Vol.14 (2), p.264-264
Hauptverfasser: 高野文夫, 関口基, 大森郁朗
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:歯質に微量に存在する元素, すなわちtrace elementsについては, 近年, 各種の微量化学分析法の開発およびその歯科分野への導入に伴い, その研究報告が行われるようになってきた. 我々は歯質の性状と齲蝕罹患性との関係を主題として, その手がかりを歯質の化学組成に求めることを企て, レーザマイクロプローブを用いて, 歯質に局在するtrace elementsの分布についての研究を行っている. 前回は, 乳歯表層エナメル質中のtrace elementsの定性ならびに半定量分析を行い, Mn, Fe, Sn, Si, Al, Cu, Zn, Ti, Ni, Srの各微量元素を同定, その相対分布について報告した. 一方, 乳歯の歯質は, いわゆる新産線を境として, 出生前と出生後の2つの時期にわたって形成され, その形成環境を異にしている. この, 新産線によって分けられた乳歯歯質の表層エナメル質の化学組成の相違については, 従来報告を見ない. 我々は今回, レーザマイクロプローブを用いて, この乳歯表層エナメル質中の, 数種のtrace elementの分布について検討を加えた. 抜去上顎乳中切歯の健全唇側歯面を, 切縁側, 中央部, 歯頸側の3部分に分け, 各部分から試料を採取したのち, 歯牙を唇舌的に二分し, エナメル質内の新産線の位置を確認した. これにより, 試料採取箇所を出生前形成エナメル質40カ所と, 出生後形成エナメル質47カ所に分類し, Mn, Fe, Sn,Si, Cu, Niの6元素について, 両エナメル質における相対量を比較したところ, Mn, Fe, SnについてはP<0. 01, NiについてはP<0. 05で有意の差をもって, 出生前形成エナメル質の含有量が高かった. Besicらはエナメル質を酸抵抗性と酸易溶性の2群に分けて微量元素分析を行ない, trace elementsの多くが前者において高い濃度を示したと報告している. 今回, Mn, Fe, Sn, Niの歯表面含有量が, 出生前形成エナメル質に有意の差をもって多いことが明らかになったが, 例えばFeについては, 分娩時臍帯血血清Fe濃度が, 新生児あるいは乳児の血清Fe濃度の約2倍であることとよく符合しており, エナメル質形成環境の違いがtrace elementsの濃度の差をもたらしていると推察された.
ISSN:0583-1199