16 フォルモクレゾールの組織反応に関する研究 第1報 フォルモクレゾールの濃度変化が組織透過性ならびに組織変化に及ぼす影響

フォルモクレゾール(FC)はBuckleyによって処方されて以来, 現在も根管の消毒剤として, あるいは乳歯の断髄法に広く応用されている薬剤である. しかしながら, FC自体生体組織に対して強い蛋白凝固作用および組織刺激作用を有し, 一面好ましくない性状を備えていることも事実である. そこで演者らは乳歯のFC断髄法の改良を目的として, FCの濃度の影響, あるいは溶剤の種類の影響について検討を加えているが, 今回は3種類のFC液を調合し, さらにGlycerinおよび著明な組織浸透力を有するジメチルフォキサイド(DMSO)の2種類の溶剤を用いて, これらの薬剤の組織反応について観察を行った....

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Veröffentlicht in:小児歯科学雑誌 1976, Vol.14 (2), p.254-255
Hauptverfasser: 池田孝雄, 木沢清, 大森郁朗
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:フォルモクレゾール(FC)はBuckleyによって処方されて以来, 現在も根管の消毒剤として, あるいは乳歯の断髄法に広く応用されている薬剤である. しかしながら, FC自体生体組織に対して強い蛋白凝固作用および組織刺激作用を有し, 一面好ましくない性状を備えていることも事実である. そこで演者らは乳歯のFC断髄法の改良を目的として, FCの濃度の影響, あるいは溶剤の種類の影響について検討を加えているが, 今回は3種類のFC液を調合し, さらにGlycerinおよび著明な組織浸透力を有するジメチルフォキサイド(DMSO)の2種類の溶剤を用いて, これらの薬剤の組織反応について観察を行った. Wistar系雌ラットの背部皮膚組織に被検薬剤10μlを注入し, 直ちに0. 5%Evans blueを静注し, 薬剤の組織浸透性あるいは炎症の拡大範囲として色素滲出範囲の測定を行ない, さらにその組織変化を病理組織学的に観察した. 観察期間は薬剤注入後1日, 1週, 2週, 4週とした. 使用薬剤はFC(Formalin 45%, Tricresol 45%, Ethanol 19%)BFC(Formalin 50%, Tricresol 35%, Glycerin 15%)BFC. DMSO(Formalin 50%, Tricresol 35%, DMSO 15%)の3種類の原液と, Glycerin生食水(3:1)の溶液および100%DMSOで各々2倍, 5倍, 10倍に稀釈し, 12種類の稀釈薬剤を使用した. 色素滲出試験ではすべての薬剤において直後から著明な色素滲出が見られ, 特に1日後で最大を示しFC薬剤の広範囲に及ぶ組織刺激作用が見られた. そのうち, 初期反応ではBFC・DMSOの原液が著しい増大を示し, 1週間で著しい減少を示したが, 以後は3種類の原液ともに同じ減少傾向がうかがえた. 薬剤の濃度がうすくなるに従い, 色素滲出反応に減少が認められ, わずかながらGlycerin生食水で2倍と10倍に稀釈したものについて4週後にわずかな増加傾向がみられた. 一方組織所見では一般にFCの刺激性および凝固作用が著明に見られたが, 10倍稀釈のものだけは他のものに比べて弱い組織反応を示し, しかも治癒化が早くから認められた. この傾向はことにDMSOで稀釈したBFCで著明であった. 色素滲出と組織所見との関連性は明らかにされなかったが, この関連性については炎症性産物もその一因として考慮する必要があるように思われた.
ISSN:0583-1199