33 乳前歯の臨床的歯冠形態について(予報)

歯乳歯の歯冠形態に関する研究は数多く行なわれており, 特に若月は等高線図法を応用し, 詳細な検索を実施している. しかるにこの種の報告は, 大部分が解剖学的歯冠形態について検索したもので, 臨床的歯冠形態に関する研究は, 演者らの渉猟した限りでは, 佐牟田の上顎第1乳臼歯を対象とした報告があるのみに過ぎない. しかし, 佐牟田の研究方法は, 石膏模型を使用のため同一歯牙を対象とし, 臨床的歯冠と解剖学的歯冠の差異について比較することは不可能である. そこで抜去乳歯を用い両者間の関係について検索するため, 本研究を企画し, 今回は予報として上下顎乳犬歯についての検索結果を報告する. 被検資料は,...

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Veröffentlicht in:小児歯科学雑誌 1975, Vol.13 (3), p.305-305
Hauptverfasser: 今村幸男, 桐原俊治, 杉原惇, 薬師寺仁, 町田幸雄
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:歯乳歯の歯冠形態に関する研究は数多く行なわれており, 特に若月は等高線図法を応用し, 詳細な検索を実施している. しかるにこの種の報告は, 大部分が解剖学的歯冠形態について検索したもので, 臨床的歯冠形態に関する研究は, 演者らの渉猟した限りでは, 佐牟田の上顎第1乳臼歯を対象とした報告があるのみに過ぎない. しかし, 佐牟田の研究方法は, 石膏模型を使用のため同一歯牙を対象とし, 臨床的歯冠と解剖学的歯冠の差異について比較することは不可能である. そこで抜去乳歯を用い両者間の関係について検索するため, 本研究を企画し, 今回は予報として上下顎乳犬歯についての検索結果を報告する. 被検資料は, 交換期のため要抜去と診断された乳犬歯中, 周囲歯齦が正常と思われる上顎10例, 下顎7例の計17例で, 抜去前の状態を可及的無圧下に印象採得し, その印象面に抜去歯を適合させた後, 即時重合レジンを填入硬化させ, 口腔内植立状態を再現させた. 次いで資料を丸本工業製試料埋込用樹脂にて包埋し, 歯冠軸に平行で, しかも切縁と直交するように隣接面より, 1mm間隔で切断し, 切断面の10倍拡大像を投影機上でトレースした後, 得られた図面上にて解剖学的歯冠長, 臨床的歯冠長, 唇側および舌側の歯頸間距離(解剖学的歯頸部と臨床的歯頸部を結ぶ直線距離)の計測と臨床的歯冠指数(臨床的歯冠長/解剖学的歯冠長×100)を求めることにより, 臨床的歯冠と解剖学的歯冠の差異について検索した. 上顎においては全例とも, 解剖学的歯冠長が臨床的歯冠長より大で, 解剖学的歯頸部と臨床的歯頸部の両歯頸間距離は唇側で0. 2mm~2. 4mm, 舌側で0. 3mm~2. 7mmの範囲内であり, 臨床的歯冠指数は44~88の範囲内であった. 一方, 下顎は解剖学的歯冠長より臨床的歯冠長が大の症例が2例あり, 歯頸間距離も上顎に比べ小さく, 臨床的歯冠指数も69~108で解剖学的歯冠と臨床的歯冠の差は, 小さかった. 今回の研究に用いた被検歯は全て交換期乳歯のため, 萠出間もない乳歯と比較し歯齦の退縮が考えられる. しかし, なおかつほとんどの症例で, 臨床的歯冠の歯頸部は解剖学的歯冠の最大豊隆部付近に相当し, 従って臨床的歯冠は解剖学的歯冠の約3/4ないし2/3であった. この傾向は, 上顎において著しく認められた. 従って適切な乳歯歯冠形態を実施する上で, 臨床的歯冠と解剖学的歯冠の差異を熟知することは必要欠くべからざることといえる.
ISSN:0583-1199