26 乳歯の初期う蝕発生における臨床的観察

乳歯う蝕の発生および進行について, 基礎的にエナメル質表面に白濁斑, 着色斑および実質欠損が極く表層にのみとどまるヒト乳歯を用いてmicroradiogramおよび組織化学的に観察を行ってきた結果, う蝕の拡がりについては, 表在性低石灰化帯がよくみられる部に, 選択的に連なっているように観察された. また, 人工的脱灰操作を加えたヒトの歯のエナメル質の脱灰進行の様相をみると, やはり表在性低石灰化帯か, 或いは表在性低石灰化帯がよくみられる部が脱灰の進行路になっていると思われる所見を得た. 一方, 臨床的に初期う蝕が, どの歯面のどの部位から発現し, どのように拡がるかについて, 従来の報告...

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Veröffentlicht in:小児歯科学雑誌 1971, Vol.9 (2), p.228-228
Hauptverfasser: 両川辰雄, 小林勝代, 大淵敦子, 甘利英一
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:乳歯う蝕の発生および進行について, 基礎的にエナメル質表面に白濁斑, 着色斑および実質欠損が極く表層にのみとどまるヒト乳歯を用いてmicroradiogramおよび組織化学的に観察を行ってきた結果, う蝕の拡がりについては, 表在性低石灰化帯がよくみられる部に, 選択的に連なっているように観察された. また, 人工的脱灰操作を加えたヒトの歯のエナメル質の脱灰進行の様相をみると, やはり表在性低石灰化帯か, 或いは表在性低石灰化帯がよくみられる部が脱灰の進行路になっていると思われる所見を得た. 一方, 臨床的に初期う蝕が, どの歯面のどの部位から発現し, どのように拡がるかについて, 従来の報告では不明な点が多い. 今回, 私達は岩手医科大学歯学部小児歯科外来を訪れた3才から5才までの歯牙年令IIAの小児55名について, 白濁斑, 着色斑およびC1の3つに関して臨床的に観察を行った. その結果, 白濁斑, 着色斑およびC1の発現状態は類似した様相を示し, 乳前歯では唇面, 乳臼歯では頬面と咬合面に多くみられた. さらに部位的には歯冠最大膨隆部と歯肉縁との間に多くみられ, これら初期う蝕の拡がりの状態は, この部において, 多くのものが点状, 線状および帯状に観察された. また咬合面においては, 小窩裂溝部に多く認められた. これらのことから, 乳歯の初期う蝕は, 健全乳歯において表在性低石灰化帯が, しばしばみられる部位と, ほぼ同部位に発現し, またう蝕の拡がりも, 表在性低石灰化帯の拡がりと類似することから, 両者の関連性が窮われる. 乳歯の初期う蝕の検査に際しては, 表在性低石灰化帯の存在部位を考慮しながら咬合面の小窩裂溝部と, 歯冠の唇面および頬面の最大膨隆部と歯肉縁との間を精密に検査することが, 臨床上, 最も必要と思われる.
ISSN:0583-1199