1 両側性唇顎口蓋裂に併発せる先天性下唇瘻の1例
先天性下唇瘻は比較的めずらしく, 1845年にDemarquayが初めて報告して以来, 私達が調査した範囲内では外国において約100例, わが国においては21例が報告されている. 本症の多くは上唇, 上顎骨および口蓋の奇形を伴うといわれている. 私達は両側性唇顎口蓋裂に併発した先天性下唇瘻の1例に遭遇したので, 文献的考察を加え報告した. 患者は5才8ヵ月女児. 主訴:発音障害. 家族歴, 既往歴ともに特記事項なく, 現病歴は生後7日目に兎唇形成術, 2才10ヵ月に口蓋形成術を行なっている. 現症は下唇中央部に対称性2箇の半月状陥凹を認め, 無色透明, やや粘稠な唾液様分泌液を排出している....
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Veröffentlicht in: | 小児歯科学雑誌 1967, Vol.5 (1), p.117-117 |
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Hauptverfasser: | , , , , |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 先天性下唇瘻は比較的めずらしく, 1845年にDemarquayが初めて報告して以来, 私達が調査した範囲内では外国において約100例, わが国においては21例が報告されている. 本症の多くは上唇, 上顎骨および口蓋の奇形を伴うといわれている. 私達は両側性唇顎口蓋裂に併発した先天性下唇瘻の1例に遭遇したので, 文献的考察を加え報告した. 患者は5才8ヵ月女児. 主訴:発音障害. 家族歴, 既往歴ともに特記事項なく, 現病歴は生後7日目に兎唇形成術, 2才10ヵ月に口蓋形成術を行なっている. 現症は下唇中央部に対称性2箇の半月状陥凹を認め, 無色透明, やや粘稠な唾液様分泌液を排出している. 消息子の挿入により, 矢状方向約10mmの平行な盲管を認め口唇粘摸部に達している. 上顎乳歯, 下顎乳臼歯の高度のう蝕, 両側性唇顎口蓋裂の手術瘢痕がみられ, 頭部X線規格写真の分析により上顎前歯部の発育不全が認められた. なお開放性鼻声, 構音障害を認めた, 処置および経過は全身麻酔下でう歯の抜去, 下唇瘻の摘出を行ない, 下唇瘻については詳細な組織学的検索を行なった. そして機能ならびに言語治療の目的でSpeech aidを装着した. 本症の発生に関しては口唇粘液腺の発育異常説あるいは下唇の形成, 発育の異常に関連して発生する説など定説がない. 遺伝関係も重視されているが私達の症例では確認出来なかった. 「質問」(東医歯大・歯)藤井信雅 随伴奇型は顎, 口唇等の奇型だけしか表われないのか. 「回答」 平岡正隆 口蓋裂等の奇形の他, Berand's & Trolat'sにより内反足の例が報告されております, その他の奇形は私達の調査範囲では認められていません. 「追加」 西嶋克己 唇顎口蓋裂患者にMcNeilの上顎矯正法またはその変法による術前顎矯正が行なわれ, 近年はさらに世界的に議論の中心の一つとなっている顎裂に骨移植を行ない, 術後上唇, 外鼻の形態, 歯列弓形態, 咬合状態がより正常形に近いものが多くえられるようになった. しかしながら, 私たちを訪れる患者の中には, 上唇は瘢痕形成を伴い, 下唇に対して扁平に後退, つまり上唇横径の緊張の度合が強いものが多くみられ, 義歯の前歯部を圧迫し, その離脱の大きな原因となる. これに加え上顎骨発育障害, 咬合異常がしばしばみられるのでさらに義歯の不安定を助長する. また一方言語治療にしばしば必要とされるSpeech aidの使用にも困難をきたす. 私たちの症例は未だ遠隔成績を云々しうる時期ではないが, 義歯を装着し, 発音, 咀嚼, 嚥下など機能的回復のみならず審美的改善をはかるために, 歯科補綴学的理論の上に立脚して, 顎の発育を阻害しないアタッチメント, 鉤などの応用およびその改良に関する研究を行なっているので追加した. |
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ISSN: | 0583-1199 |