日本薬局方に見られた向精神・神経薬の変遷 (その27) 21世紀になってヨーロッパ薬局方, 英国薬局方に収載されたホップ腺Hopfenmehl (ルプリンLupulin) の規格・試験法の変遷およびホップ腺の規格成分についての新たな知見

「要旨」「目的」 : ホップ腺 (ルプリン) は長年にわたりビールの原料として使用されてきた. 一方西欧では, 古くから生薬として, 鎮静薬, 苦味健胃薬に利用されてきた. そしてかつて1800年代後半~1900年代初めにかけて, JPをはじめUSP, BP, DABなど各国薬局方に本品が収載された. それから約100年後の21世紀直前になって, EPでは, EP3.0 (1998) ~今日のEP10.0 (2020), BPでは, BP2000~今日のBP2022まで, 約20年間, 継続収載されている. 今回は21世紀になって, EPおよびBPに収載されたホップ腺の規格・試験法に関して,...

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Veröffentlicht in:薬史学雑誌 2022-12, Vol.57 (2), p.101-110
1. Verfasser: 柳沢清久
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:「要旨」「目的」 : ホップ腺 (ルプリン) は長年にわたりビールの原料として使用されてきた. 一方西欧では, 古くから生薬として, 鎮静薬, 苦味健胃薬に利用されてきた. そしてかつて1800年代後半~1900年代初めにかけて, JPをはじめUSP, BP, DABなど各国薬局方に本品が収載された. それから約100年後の21世紀直前になって, EPでは, EP3.0 (1998) ~今日のEP10.0 (2020), BPでは, BP2000~今日のBP2022まで, 約20年間, 継続収載されている. 今回は21世紀になって, EPおよびBPに収載されたホップ腺の規格・試験法に関して, 今日の2022年までの20年間の変遷について調査を行った. そしてEP, BPに規定されたホップ腺の成分の規格試験に関して, 近年の学術文献に見られたホップ腺の成分などの学術情報と対比させて考察を行った. さらにホップ腺の成分の薬理学的, 生物学的活性効果に関する学術情報を科学的根拠とした場合, ホップ腺の今後の治療薬, 医薬資源としての展開についても考察を行った. 「方法」 : 1) EP3.0 (1998) ~EP10.0 (2020), およびBP2000~BP2022に収載されたホップ腺の規格・試験に関して, 検索を行った. 2) ホップ腺の成分に関する学術文献を抽出した. そこに掲載されたEP, BPに規定されたホップ腺の成分のフムロン, イソフムロン (フムロンの異性体), ルプロン, キサントフモールの薬理学的, 生物学的活性効果の調査を行った. 「結果」 : 1) 最初にホップ腺が収載されたEP3.0 (1998) およびBP2000に規定されたホップ腺の規格・試験法は今日のEP10.0 (2020) およびBP2022まで継続維持されている. 2) 文献調査から, EP, BPに規定されたホップ腺の成分に関して, 多彩な薬理学的, 生物学的活性効果があることがわかった. 「結論」 : 21世紀直前になって, ホップ腺はEPでは, EP3.0 (1998) より, またBPでは, BP2000より収載された. この当時, 規定されたホップ腺の規格試験法は今日まで, 約20年以上, そのまま維持, 継続されている. ホップ腺含有成分の定性試験として, フムロン, ルプロン, キサントフモールの3成分について, 薄層クロマトグラフィーによる検出が規定された. 近年の薬学水準の向上, 化学技術の進歩により, この3成分の化学構造が解明され, また多くの研究によって, その薬理的, 生物学的活性効果についても, 解明された. このことを科学的根拠として, ホップ腺は癌, 白血病, アルツハイマー型認知症などの多岐にわたる疾患の治療に効果が期待される. この中で, 著者はアルツハイマー型認知症に対して, ホップ腺がその治療薬 (認知症の進行抑制) の新たな開拓につながると期待する. そして今後, 貴重な薬用資源となり得るものと考えた.
ISSN:0285-2314