日本薬局方に見られた向精神・神経薬の変遷 (その26) 日・米・英・独の各国薬局方に見られたホップ腺Hopfenmehl (ルプリンLupulin) の規格・試験法の変遷および対比ならびにホップ腺の成分についての知見

「要旨」目的:Lupulin(Hopfenmehl)はビールの原料として, 長年にわたり, ビールに苦味, 香り, 泡立ちを付与するために使用されてきた. 生薬に関して, Lupulinは苦味のある良薬として, 鎮静薬, 苦味健胃薬として使われた. かつて1800年代後半~1900年にかけて, LupulinはJPおよびUSP, BP, DABなどの海外の薬局方に収載された. そこで今回, 著者はかつてJP, USP, BP, DABに収載されたLupulinの規格・試験法の調査, 検索を行った. また著者は1800年代後半~1900年代前半, および近年の学術文献に示されたLupulinの樹...

Ausführliche Beschreibung

Gespeichert in:
Bibliographische Detailangaben
Veröffentlicht in:薬史学雑誌 2022-06, Vol.57 (1), p.42-52
1. Verfasser: 柳沢清久
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
Tags: Tag hinzufügen
Keine Tags, Fügen Sie den ersten Tag hinzu!
Beschreibung
Zusammenfassung:「要旨」目的:Lupulin(Hopfenmehl)はビールの原料として, 長年にわたり, ビールに苦味, 香り, 泡立ちを付与するために使用されてきた. 生薬に関して, Lupulinは苦味のある良薬として, 鎮静薬, 苦味健胃薬として使われた. かつて1800年代後半~1900年にかけて, LupulinはJPおよびUSP, BP, DABなどの海外の薬局方に収載された. そこで今回, 著者はかつてJP, USP, BP, DABに収載されたLupulinの規格・試験法の調査, 検索を行った. また著者は1800年代後半~1900年代前半, および近年の学術文献に示されたLupulinの樹脂, 精油の化学成分の調査, 検索を行った. そして著者はそこから収集したLupulinの成分の学術情報から, Lupulinの鎮静作用の化学成分的根拠について考察を行った. さらに今日の薬学水準において, Lupulinの鎮静効果, および生物学的活性効果に関して, 将来的に有効活用できる生薬となるか考えてみた. 方法:1)著者は1800年代後半のJP, USP, BP, DABに収載されたLupulinの規格・試験法について, 調査, 検索を行った. 2)著者は1800年代後半~1900年代初めの学術文献に示されたLupulinの樹脂, 精油の化学成分について, 調査, 検索を行った. 3)著者は近年の学術文献に示されたLupulinの学術情報について, 調査, 検索を行った. 結果:1800年代後半の各国薬局方に示されたLupulinの規格に関して, 臭いと味の性状については, 共通していた. 臭いは強い芳香臭があり, 味は非常に強い苦みを有することが示された. この当時の学術文献には, この苦味の素因はLupulinの樹脂に含まれているHopfenbitterstoffeであることが示された. その後の研究で, Hopfenbitterstoffeは弱酸性の2つの結晶化Hopfenbitterstoffeに分離できることがわかった. それぞれについては, α-およびβ-Hopfenbittersaureと呼ばれた. 近年の薬学水準の向上と化学技術, 機器分析の進歩により, α-およびβ-Hopfenbittersaureの化学構造が解明された, そしてα-HopfenbittersaureのHumuloneがビールの醸造過程においてIsoα-saure(IsoHumulone)が生成される. それは肥満抑制, アルツハイマー型認知症の認知機能の改善に期待できる. 結論:Lupulinの苦味の素因のHopfenbitterstoffeを構成するα-およびβ-Hopfenbittersaureの化学構造が解明された. そしてLupulinの鎮静効果の本質はHopfenbitterstoffeと推察した. またLupulinの苦みは多岐にわたる病態に対して, 様々な薬効を発揮している.
ISSN:0285-2314