骨組織上に播種した歯髄幹細胞は歯根膜関連遺伝子を発現する: 接触する基質の硬さが細胞分化に及ぼす影響

目的 : 重篤な歯周炎や外傷などのケースにおいては, 歯槽骨を含め歯の支持組織である歯根膜組織の破壊が進む. ゆえに, 歯根膜組織再生を誘導することができる細胞移植を用いた新規歯周組織再生療法の開発が望まれている. 歯髄組織には歯髄幹細胞が豊富に含まれており, 再生医療の現場では重要な細胞源として注目されている. 近年, 間葉系幹細胞は接する基質の硬さにより分化の運命が方向づけられるとの報告がされている. そこで本研究では, 歯根膜スペースへ移植した歯髄細胞が, 接する基質の硬さを触知して歯根膜様細胞分化を遂げる能力を有する可能性を考え, 歯周組織を再生させる細胞源としての有用性について検討す...

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Veröffentlicht in:日本歯科保存学雑誌 2018, Vol.61(6), pp.343-353
Hauptverfasser: 吉田, 晋一郎, 和田, 尚久, 長谷川, 大学, 御手洗, 裕美, 有馬, 麻衣, 友清, 淳, 濱野, さゆり, 杉井, 英樹, 前田, 英史
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:目的 : 重篤な歯周炎や外傷などのケースにおいては, 歯槽骨を含め歯の支持組織である歯根膜組織の破壊が進む. ゆえに, 歯根膜組織再生を誘導することができる細胞移植を用いた新規歯周組織再生療法の開発が望まれている. 歯髄組織には歯髄幹細胞が豊富に含まれており, 再生医療の現場では重要な細胞源として注目されている. 近年, 間葉系幹細胞は接する基質の硬さにより分化の運命が方向づけられるとの報告がされている. そこで本研究では, 歯根膜スペースへ移植した歯髄細胞が, 接する基質の硬さを触知して歯根膜様細胞分化を遂げる能力を有する可能性を考え, 歯周組織を再生させる細胞源としての有用性について検討することとした. 材料と方法 : ヒト歯髄細胞およびヒト歯根膜細胞は, 全身疾患を有さない抜歯目的の患者より抜去した歯から単離し, またヒト歯髄幹細胞およびヒト歯根膜幹細胞は, それぞれヒト歯髄細胞およびヒト歯根膜細胞からsingle colony selectionにより単離して用いた. 各種遺伝子発現を, 定量的RT-PCR法を用いて検討した. 骨芽細胞・脂肪細胞および軟骨細胞誘導実験は, alizarin red S染色, oil red O染色およびalcian blue染色によって評価した. 細胞表面抗原の発現を, フローサイトメーターを用いて測定した. 健全なブタ下顎骨から縦10mm×横10mm×高さ3mmに整形したブタ顎骨スライスを採取し, 実験に用いた. ラットGFP発現歯髄細胞の歯根膜組織へのホーミングについて, ラット第一臼歯の意図的再植時に, 抜歯窩へ細胞移植を行い, 免疫組織化学的染色法を用いて解析した. 成績 : ヒト歯髄細胞とヒト歯根膜細胞における歯根膜関連因子の遺伝子発現を比較した結果, ヒト歯根膜細胞において有意な高発現を認めた. ヒト歯髄幹細胞およびヒト歯根膜幹細胞は, 多分化能を示し幹細胞マーカーを高発現していた. また, ヒト歯髄細胞およびヒト歯根膜細胞と同様に, ヒト歯髄幹細胞と比較してヒト歯根膜幹細胞は歯根膜関連遺伝子の高発現を認めた. ブタ顎骨スライス上でヒト歯髄幹細胞を培養した結果, 歯根膜関連遺伝子発現は, 培養ディッシュ上で培養した歯髄幹細胞と比較して有意に上昇しており, その発現量はヒト歯根膜幹細胞と同等であった. 加えて, 抜歯窩に移植したラットGFP発現歯髄細胞は, 再植歯周囲の歯根膜組織内に多く生着していることが認められた. 結論 : ヒト歯髄幹細胞を骨基質上で培養すると歯根膜関連遺伝子発現が上昇し, 歯根膜組織を再生させる細胞源として有用である可能性が示唆された.
ISSN:0387-2343
2188-0808
DOI:10.11471/shikahozon.61.343