インプラント体周囲に及ぶ根尖性歯周炎を生じたビスホスホネート製剤静脈内投与患者に対して非外科的に治療を行った一症例
目的 : ビスホスホネート (BP) 製剤静脈内投与患者において, 隣在歯の根尖性歯周炎により生じたと診断されたインプラント体周囲への骨欠損に対して, 非外科的歯内治療によって治癒を導くことができた症例について報告する. 症例の概要 : 患者は51歳女性. 上顎左側前歯部の自発痛と歯肉腫脹を主訴とし, 21, 23歯と22部インプラントの保存治療を希望して来院された. 多発性骨髄腫の転移予防のために, BP製剤 (ゾメタ) の静脈投与を受けていた. 21歯, 23歯はともに打診痛・咬合時痛・根尖部圧痛を認め, 動揺度2度, プロービングデプスは全周3mm以内であった. 21, 22根尖部歯肉...
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Veröffentlicht in: | 日本歯科保存学雑誌 2015, Vol.58(1), pp.71-80 |
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Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Schlagworte: | |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 目的 : ビスホスホネート (BP) 製剤静脈内投与患者において, 隣在歯の根尖性歯周炎により生じたと診断されたインプラント体周囲への骨欠損に対して, 非外科的歯内治療によって治癒を導くことができた症例について報告する. 症例の概要 : 患者は51歳女性. 上顎左側前歯部の自発痛と歯肉腫脹を主訴とし, 21, 23歯と22部インプラントの保存治療を希望して来院された. 多発性骨髄腫の転移予防のために, BP製剤 (ゾメタ) の静脈投与を受けていた. 21歯, 23歯はともに打診痛・咬合時痛・根尖部圧痛を認め, 動揺度2度, プロービングデプスは全周3mm以内であった. 21, 22根尖部歯肉にサイナストラクトを認めた. 22部インプラント周囲の歯肉に発赤, 腫脹はなく, 動揺も認められず, プロービングデプスは全周1mmで, エックス線写真にて歯頸部での皿状の吸収を認めたが, 炎症所見は認めなかった. エックス線写真とコーンビームCT (CBCT) 所見より, 21, 23根尖部から, 22部インプラント部を含む透過像を認めた. 以上の所見から, 上行性インプラント周囲炎と診断し, 21, 23歯の根尖性歯周炎は認められるがインプラント体への感染の可能性は少ないと判断した. 患者には保存治療と外科的治療のリスクを説明したところ非外科的な治療を希望されたため, 21, 23歯に対して非外科的歯内治療である根管治療を開始した. 21歯に穿孔部を認めたためMineral Trioxide Aggregateにて穿孔封鎖を行い, 根管充塡後, テンポラリークラウンにて経過観察を行い, 治癒傾向が認められたため歯冠補綴を行った. 補綴1年後において21, 23歯の臨床症状は, 自覚症状は認めず, 打診痛・咬合時痛・根尖部圧痛はなく, プロービングデプスは全周2mm以内, 動揺もなく, サイナストラクトは消失した. エックス線写真, CBCT所見において, 根尖部透過像は縮小傾向を認めていた. 咬合等の機能にも問題はなく, 治癒中と診断された. また22部インプラントも著変を認めなかった. 考察および結論 : 今回の症例では, 根尖性周囲炎由来の大きな骨欠損を認め, インプラント周囲骨も吸収していたが, インプラント体まで感染が波及していなかったために, 根尖性周囲炎の治癒に伴い周囲骨も再生したものと考えられた. 早期における感染源の可及的除去と予防がBP製剤による顎骨壊死に大きく影響を与えるため, インプラントに近接する根尖性歯周炎は, インプラント周囲炎との鑑別, インプラント体への感染の有無の診断と迅速な治療が予後に大きく影響を及ぼすものと思われた. |
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ISSN: | 0387-2343 2188-0808 |
DOI: | 10.11471/shikahozon.58.71 |