2型糖尿病モデルラットに作製した歯周組織欠損の早期創傷治癒過程におけるVascular Endothelial Growth Factor(VEGF)と細小血管障害の関係
糖尿病は歯周病に対する重要なリスクファクターと考えられており,歯周病は,網膜症,腎症,神経障害,細小血管障害,大血管障害に続く糖尿病の第6番目の合併症と提唱され,その合併症のどれもが血管障害に起因するものである.血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)は,血管内皮細胞の増殖・分化,血管透過性の亢進,強力な血管拡張作用などをもつ糖タンパク質である.また,VEGFは悪性腫瘍や糖尿病網膜症などの異常な血管新生や血管透過性亢進が認められる病態に大きく関与していることが知られるようになってきた.そこで本研究では,歯周組織の創傷治癒過程における微小...
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Veröffentlicht in: | 日本歯科保存学雑誌 2010/12/31, Vol.53(6), pp.601-610 |
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Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Schlagworte: | |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 糖尿病は歯周病に対する重要なリスクファクターと考えられており,歯周病は,網膜症,腎症,神経障害,細小血管障害,大血管障害に続く糖尿病の第6番目の合併症と提唱され,その合併症のどれもが血管障害に起因するものである.血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)は,血管内皮細胞の増殖・分化,血管透過性の亢進,強力な血管拡張作用などをもつ糖タンパク質である.また,VEGFは悪性腫瘍や糖尿病網膜症などの異常な血管新生や血管透過性亢進が認められる病態に大きく関与していることが知られるようになってきた.そこで本研究では,歯周組織の創傷治癒過程における微小循環の回復に糖尿病がいかなる影響を及ぼすかを明らかにするために,2型糖尿病モデルラットであるGoto-Kakizaki(GK)ラットの臼歯部に人工的に作製した歯周組織欠損の治癒過程におけるVEGFの局在を免疫組織化学的に検索し,さらに新生された毛細血管の超微形態を観察した.生後8週齢のSD系ラットを対照群,GKラットを実験群とし,両群の上顎臼歯部口蓋側の歯肉粘膜骨膜弁を剥離し,ハンドスケーラーにて掻爬して歯周組織欠損を作製した.その後,歯肉弁を元の位置に戻し1糸縫合を行い,術後3,5,7日にラットを各群6匹ずつ安楽死させ,上行大動脈からの灌流固定の後,被験歯根を含む周囲組織を一塊として採取し脱灰した.脱灰後,各群4匹についてはパラフィン切片を作製し,VEGFの免疫染色を行い,光学顕微鏡で観察した.残りの2匹については,Epon812に樹脂胞埋し,超薄切片を作製し透過型電子顕微鏡にて観察した.その結果,術後3,5日目において歯周組織欠損部の結合組織にVEGFの局在が両群ともに認められたが,実験群では特に毛細血管周囲に強く局在し,活発な毛細血管の新生像も観察された.術後7日目において対照群ではVEGFの局在はほとんどみられなかったが,実験群では歯周組織欠損部およびその周辺の結合組織中の毛細血管周囲にその局在が認められ,電顕像では血管の新生像も依然としてみられた.さらに実験群には,基底膜の多層化のみられる毛細血管も観察された.以上の結果より,実験群では対照群に比較してVEGF発現が促進され,術部での血管新生,血管透過性亢進が実験期間を通じて持続し,それによって歯周組織欠損部に低酸素状態が作り出されることによりさらなるVEGFの発現が誘発されて,そのことが歯周組織の創傷治癒における微小循環の回復に影響を及ぼしていることが示唆された. |
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ISSN: | 0387-2343 2188-0808 |
DOI: | 10.11471/shikahozon.53.601 |