フッ素徐放性レジンの齲蝕抑制効果のpHサイクルによる評価

研究目的:フッ素の齲蝕抑制効果を期待して,レジン系材料においてフッ素含有材料が数多く開発されている.しかし,製品によりフッ素の配合形態も異なるなど,レジン系材料の臨床評価は定かではない.当教室で従来から使用している自動pHサイクル装置は,口腔内同様のpHの連続した変化と溶液の還流を再現し,脱灰と再石灰化を繰り返すことが可能である.本研究では,この自動pHサイクル装置を用いて人工齲蝕を発生させ,日常臨床でよく使用されているフッ素徐放性レジンについて,齲蝕抑制効果を検討した.材料と方法:本研究ではヒト抜去小臼歯を使用した.使用材料の組み合わせとして,BS群:Beautifil II(F+)とFlu...

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Veröffentlicht in:日本歯科保存学雑誌 2009/02/28, Vol.52(1), pp.39-50
Hauptverfasser: 木地村, 太基, 小松, 久憲, 松田, 康裕, 奥山, 克史, 衣川, 道彦, 佐野, 英彦
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Zusammenfassung:研究目的:フッ素の齲蝕抑制効果を期待して,レジン系材料においてフッ素含有材料が数多く開発されている.しかし,製品によりフッ素の配合形態も異なるなど,レジン系材料の臨床評価は定かではない.当教室で従来から使用している自動pHサイクル装置は,口腔内同様のpHの連続した変化と溶液の還流を再現し,脱灰と再石灰化を繰り返すことが可能である.本研究では,この自動pHサイクル装置を用いて人工齲蝕を発生させ,日常臨床でよく使用されているフッ素徐放性レジンについて,齲蝕抑制効果を検討した.材料と方法:本研究ではヒト抜去小臼歯を使用した.使用材料の組み合わせとして,BS群:Beautifil II(F+)とFluoro Bond Shake One(F+),AMF群:Clearfil AP-XとClearfil Mega Bond FA(F+),UM群:Unifil-Flow(F+)とClearfil Mega Bond,SM群:SolareとClearfil Mega Bondの4群を選択した.頬側面に窩洞形成,充填を行い水中保存した.24時間後に頬舌的に切断,厚さ約150μmに研磨調整し,研磨面をワックスで被覆した.pHサイクルは1日6回とし連続5週間行い,脱灰溶液(0.2mol/l乳酸,3.0mmol/l CaCl2,1.8mmol/l KH2PO4,pH4.5)と再石灰化溶液(0.02mol/l HEPES,3.0mmol/l CaCl2,1.8mmol/l KH2PO4,pH7.0)を用いた.齲蝕進行評価は実験開始前,1,3,5w後にTransverse Micro Radiography(TMR)を撮影し,得られた画像を汎用画像解析ソフトウェア(Scion Image,Scion,USA)により解析を行い,Integrated Mineral Loss(IML),Lesion depth(Ld)について比較検討した.また,酸性溶液中に溶出するフッ素量を測定した.結果:IMLにおいて,1wでBS群が有意に最も低く,次いで,SM群,AMF群,UM群の順であった.3wではBS群が最も低く,次いでAMF群,UM群,SM群であり,BS群は他3群と比較して有意差があり,AMF群とSM群間に有意差があった.5wでは3wと同様な順位で,BS群とAMF群間に有意差がなく,この2群と他2群間に有意差があった.Ldにおいて,1wではUM群が最も低く,次いでAMF群,BS群,SM群の順であり,すべての群問に有意差はなかった.3wではBS群が最も低く,次いでAMF群,SM群,UM群の順であり,UM群は他3群と有意差があった.5wではBS群が最も低く,次いでAMF群,UM群,SM群の順であり,BS・AMF群とUM・SM群間に有意差を認めた.累積フッ素溶出量において,Unifil-FlowとBeautifil IIはpH4.5乳酸溶液では脱イオン水に比較して有意に高く,ボンディング材においては,Clearfil Mega Bond FA,Fluoro Bond Shake Oneのいずれも浸漬溶液による相違は認められなかった.結論:今回の研究ではBS群では優れた齲蝕抑制効果が認められ,UM群ではフッ素の効果があまり発揮されず,同じフッ素徐放性レジン間でも歯質に対する齲蝕抑制効果に相違があることがわかった.今後はこの材料間の差を明らかにすることによって,新しい材料の開発につながると考えられる.
ISSN:0387-2343
2188-0808
DOI:10.11471/shikahozon.52.39