根管洗浄液としてのアルカリイオン水の応用 : 細胞毒性と有機質溶出試験

「緒言」近年, 機能水としてアルカリイオン水が広く用いられている. アルカリイオン水は長時間アルカリ性を維持できるよう開発されたマイナスイオン水であり, 強力な洗浄除菌効果があることが知られている1). また, 慢性下痢や消化不良などの症状が表れる食中毒の防止や衛生管理対策などに幅広い分野で使用され, 薬事法の承認も得ている1). さらに, アルカリイオン水は洗口剤として使用すると, 口腔細菌に対して殺菌作用を示すとの報告や2), 顕著な副作用は認められないなどの報告もあり3), 口腔領域への応用に関して, さらに研究が進展することが期待されている. 歯内療法の一環として根管治療を行う際根管の機械的な拡大と洗浄は重要な操作であり, 根管拡大操作により生じた象牙質の削片層であるスミヤー層を除去しなければ, スミヤー層中に感染源である細菌などが残存し, 象牙質内への根管貼薬剤の浸透が阻害される4)ことが考えられるため, スミヤー層を除去することは根管洗浄の主な目的の一つであると考えられている5).