人工視覚の実現を目指して

「はじめに」 視覚障害者の生活補助装置としては, 視覚情報を聴覚や触覚など残存する他の感覚に置き換える感覚代行装置が古くから実用化されている. 音声読書器や点字ディスプレー, 色彩音声案内装置, 広義には視覚障害者ナビゲーションシステムなどが視覚代行装置にあたり, 視覚障害者のQOL(生活の質)向上に役立っている1). 近年に入り, こうした従来の福祉工学技術をもとにした感覚代行装置とは全く原理を異にする視覚の補助・再生装置の研究・開発が国内外において, さかんに行われるようになった. 視覚補綴の最終目標は, 視覚神経系と人工機械を直接, 半永久的に接続し, 光の感覚を直接的に作り出すことにあ...

Ausführliche Beschreibung

Gespeichert in:
Bibliographische Detailangaben
Veröffentlicht in:福岡医学雑誌 2006-03, Vol.97 (3), p.99-103
1. Verfasser: 田代洋行
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
Tags: Tag hinzufügen
Keine Tags, Fügen Sie den ersten Tag hinzu!
Beschreibung
Zusammenfassung:「はじめに」 視覚障害者の生活補助装置としては, 視覚情報を聴覚や触覚など残存する他の感覚に置き換える感覚代行装置が古くから実用化されている. 音声読書器や点字ディスプレー, 色彩音声案内装置, 広義には視覚障害者ナビゲーションシステムなどが視覚代行装置にあたり, 視覚障害者のQOL(生活の質)向上に役立っている1). 近年に入り, こうした従来の福祉工学技術をもとにした感覚代行装置とは全く原理を異にする視覚の補助・再生装置の研究・開発が国内外において, さかんに行われるようになった. 視覚補綴の最終目標は, 視覚神経系と人工機械を直接, 半永久的に接続し, 光の感覚を直接的に作り出すことにある. このような視覚神経系に人工的な刺激を与えることにより, 失明者の視覚回復を目指す装置を人工視覚システムと呼ぶ. 1. 電気刺激による視覚再生 視覚神経系を電気刺激することにより光覚が誘発される現象は電気的閃光(electrical phosphene)として古くから知られており2), 現況では, この現象を応用した人工視覚システムの開発が主流である.
ISSN:0016-254X