Human Papillomavirus (HPV) 感染と口腔癌の関係について - 最近の研究から

概要: Human Papillomavirus (HPV) の感染は子宮頸癌の最大の危険因子であり, 頭頸部領域では中咽頭癌の発症や治療の予後に関係している. 一方, 口腔へのHPV感染と口腔癌との因果関係についてはいまだ不明な点が多い. そこで本稿では, 最新の疫学研究や基礎的研究の結果をもとに, 口腔のHPV感染の危険因子や, 口腔癌におけるHPV陽性率およびHPV陽性口腔癌の分子生物学的特徴について検討した. その結果, 口腔癌におけるHPV DNAの陽性率は4.0~32.0%で, 高リスク型HPVの中では, HPV16が高い陽性率を示した. 上皮異形成症や口腔扁平上皮癌では, 正常口...

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Veröffentlicht in:口腔衛生学会雑誌 2017-07, Vol.67 (3), p.149-159
Hauptverfasser: 重石英生, 杉山勝
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:概要: Human Papillomavirus (HPV) の感染は子宮頸癌の最大の危険因子であり, 頭頸部領域では中咽頭癌の発症や治療の予後に関係している. 一方, 口腔へのHPV感染と口腔癌との因果関係についてはいまだ不明な点が多い. そこで本稿では, 最新の疫学研究や基礎的研究の結果をもとに, 口腔のHPV感染の危険因子や, 口腔癌におけるHPV陽性率およびHPV陽性口腔癌の分子生物学的特徴について検討した. その結果, 口腔癌におけるHPV DNAの陽性率は4.0~32.0%で, 高リスク型HPVの中では, HPV16が高い陽性率を示した. 上皮異形成症や口腔扁平上皮癌では, 正常口腔上皮と比較してHPV16陽性率が高く, HPV16が口腔癌の発生において何らかの役割を担う可能性がある. また, 口腔癌では, E6, E7 mRNAの陽性率は数%であり, HPV DNA陽性率と比較しても低いため, HPV関連口腔癌(口腔のHPV感染が原因で生じる口腔癌)において, E6, E7の安定高発現を介さない悪性形質の獲得機構の存在が示唆される. HPV16陽性口腔癌患者は陰性口腔癌患者と比較して, 予後が良好であるとの報告があるが, HPV関連口腔癌の予後についてはいまだ明らかになっていない. 口腔内の衛生状態とHPV感染には関連性があり, 口腔ケアや禁煙対策は, 口腔へのHPV感染を予防するうえで重要であると考えられる. 今後, HPV関連口腔癌の予防を科学的根拠に基づいて行うためには, HPV DNA陽性口腔癌におけるHPVの存在意義と役割を明確にする必要があり, 口腔HPV感染の基礎的, 臨床的研究の推進が強く望まれる.
ISSN:0023-2831