日本におけるフッ化物応用に関する現状と将来の保健戦略

「はじめに」う蝕は多要因性の疾患である. 20世紀の歯科医学研究の結果, この疾患は, 予防可能であることが明らかとなった1). その主たる理由は, フッ素のう蝕抑制効果の発見であり, 初期う蝕の再石灰化作用の解明であった. 多くの疫学的研究によって, 歯科先進諸国では小児う蝕の激減が報告されている2). 1980年代以降のう蝕の減少の要因について, 世界の歯科保健専門家52名から得られた質問調査によれば, う蝕の減少を40%以上説明できる要因として, 回答者の63%が「フッ化物配合歯みがき剤の使用」をあげている. また, 水道水へのフッ化物添加実施国の専門家は, その75%がう蝕減少に40%...

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Veröffentlicht in:口腔衛生学会雑誌 2000/07/30, Vol.50(3), pp.296-301
Hauptverfasser: 鶴本, 明久, 八木, 稔, 田浦, 勝彦, 磯崎, 篤則, 小林, 清吾, 境, 脩
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:「はじめに」う蝕は多要因性の疾患である. 20世紀の歯科医学研究の結果, この疾患は, 予防可能であることが明らかとなった1). その主たる理由は, フッ素のう蝕抑制効果の発見であり, 初期う蝕の再石灰化作用の解明であった. 多くの疫学的研究によって, 歯科先進諸国では小児う蝕の激減が報告されている2). 1980年代以降のう蝕の減少の要因について, 世界の歯科保健専門家52名から得られた質問調査によれば, う蝕の減少を40%以上説明できる要因として, 回答者の63%が「フッ化物配合歯みがき剤の使用」をあげている. また, 水道水へのフッ化物添加実施国の専門家は, その75%がう蝕減少に40%以上寄与した要因として「水道水へのフッ化物添加」を選択した3). このように, フッ化物の公衆衛生的応用が高いう蝕予防効果を示すことは, すでに解明されている. しかし, わが国におけるフッ化物応用の普及率は低く4), 機会あるごとに各方面から指摘されている. 日本口腔衛生学会フッ化物検討委員会は, その研究課題の1つにフッ化物応用の進展に寄与するための健康教育にかかわる要因の究明を掲げている5).
ISSN:0023-2831
2189-7379
DOI:10.5834/jdh.50.3_296