平成12年度日本油化学会エディター賞受賞によせて
この度, 「Effects of Steroids and Vitamin D3 on the Permeability of Liposomal Bilayer Membranes」が平成12年度日本油化学会エディター賞をいただくこととなり, 著者一同驚くと共に感激している次第です. 今回の受賞に際し, 当論文の推薦者ならびに編集委員の諸先生方に感謝申し上げます. 我々が研究しているリポソームは生体膜由来のリン脂質により構成される二分子膜の閉鎖小胞体であり, 生体膜類似の構造, 機能を有していることから, 生体機能を解析するための膜モデルとして利用されています. 一方, 近年の薬物療法の急速...
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Veröffentlicht in: | 日本油化学会誌 2000-10, Vol.49 (10), p.1290-1290 |
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Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | この度, 「Effects of Steroids and Vitamin D3 on the Permeability of Liposomal Bilayer Membranes」が平成12年度日本油化学会エディター賞をいただくこととなり, 著者一同驚くと共に感激している次第です. 今回の受賞に際し, 当論文の推薦者ならびに編集委員の諸先生方に感謝申し上げます. 我々が研究しているリポソームは生体膜由来のリン脂質により構成される二分子膜の閉鎖小胞体であり, 生体膜類似の構造, 機能を有していることから, 生体機能を解析するための膜モデルとして利用されています. 一方, 近年の薬物療法の急速な進歩に伴い, 医薬品の安全性等を充分に考慮した製剤設計であるドラッグデリバリーシステム(DDS)への関心はますます高くなってきています. なかでも, DDSキャリヤーとしてのリポソームの利用にはめざましいものがありますが, 依然として解決すべき問題も数多く残されています. リポソームがDDSキャリヤーとしての機能を発揮するためには, その薬理効果のみならず, “うつわ”としての性能の向上も重要であるとの観点から, 我々はこれまでに, リポソーム中におけるリン脂質と生体関連物質(脂溶性物質, スフィンゴ糖脂質, グリコ糖脂質, 水溶性高分子等)との相互作用を検討し, 安定性, 膜透過性に関する重要な知見を得てきました. さらに, 我々は生体関連物質の一つであるステロイド類に注目しました. ステロイド類の一種であるコレステロールは, リポソームを安定化させる作用を持つだけでなく, 生体膜の構成成分として(ステロイドホルモン, 胆汁酸, ビタミンDの前駆体), 生体の正常な機能の発現に欠かせないものであることが知られています. しかし, リポソームや生体膜におけるコレステロールの膜安定化機構などに関する物理化学的観点からの研究はそれほど行われていませんでした. そこで, リポソーム二分子膜中におけるリン脂質とステロイドとの相互作用について検討し, 二分子膜に及ぼすステロイドの影響は各セグメントごとに異なることを示しました. 受賞対象論文では, ステロイド環部の立体構造による影響について検討したところ, リポソームの安定性および膜透過性はステロイドやビタミンD3のステロイド環の構造に大きく起因することを明らかにしました. 今後これらの基礎的知見を基に, リポソームがDDS分野において更に発展することを期待するとともに, 一層の努力をしていきたいと考えています. 本研究の遂行にあたり, これまでに多くの方々に御指導, 御指摘を賜りましたことに一同厚く御礼申し上げます. 最後になりましたが, 日本油化学会および会員の皆様の益々のご発展を祈念いたします. (橋崎要) |
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ISSN: | 1341-8327 |