EMS-2 消化器癌術後の腸管麻痺発症に関する多施設共同後ろ向き観察研究

消化器癌の術後には手術侵襲による腸管機能低下が生じる。術後の腸管機能低下は自然経過で回復する場合が多いが、腸管機能低下が遷延するものは術後腸管麻痺と定義され、嘔気嘔吐や腹部膨満が生じることで経口摂取が困難となる。術後腸管麻痺の治療として絶飲食もしくは減圧のための胃管挿入が必要になることが多く、術後回復が遅れることで入院期間が長期化し、合併症を増加させる要因となる。その経済効果は大きく、欧米では15億ドルの損失が生じたと報告されている。  術後腸管麻痺の頻度は欧米では3~32%と報告されているが、本邦からの報告は未だない。欧米と比較して本邦では腹腔鏡手術が多く、より低侵襲な治療が行われていると考...

Ausführliche Beschreibung

Gespeichert in:
Bibliographische Detailangaben
Veröffentlicht in:外科と代謝・栄養 2019, Vol.53(3), pp.70-70
Hauptverfasser: 松井, 亮太, 石橋, 生哉, 海堀, 昌樹, 佐藤, 弘, 真貝, 竜史, 谷口, 英喜, 鍋谷, 圭宏, 深柄, 和彦, 眞次, 康弘, 宮田, 剛, 若林, 秀隆, 鷲澤, 尚宏
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
Tags: Tag hinzufügen
Keine Tags, Fügen Sie den ersten Tag hinzu!
Beschreibung
Zusammenfassung:消化器癌の術後には手術侵襲による腸管機能低下が生じる。術後の腸管機能低下は自然経過で回復する場合が多いが、腸管機能低下が遷延するものは術後腸管麻痺と定義され、嘔気嘔吐や腹部膨満が生じることで経口摂取が困難となる。術後腸管麻痺の治療として絶飲食もしくは減圧のための胃管挿入が必要になることが多く、術後回復が遅れることで入院期間が長期化し、合併症を増加させる要因となる。その経済効果は大きく、欧米では15億ドルの損失が生じたと報告されている。  術後腸管麻痺の頻度は欧米では3~32%と報告されているが、本邦からの報告は未だない。欧米と比較して本邦では腹腔鏡手術が多く、より低侵襲な治療が行われていると考えられるが、その中でも術後腸管麻痺を実臨床で経験する。このことから手術侵襲以外の要素が術後腸管麻痺に関与している可能性がある。そこで今回、消化器癌術後に発生する腸管麻痺についての多施設共同の後ろ向き観察研究を計画した。本研究の目的は消化器癌の根治術後に生じる腸管麻痺の発症頻度を明らかにし、その寄与因子を同定することである。  対象は参加施設で2014年1月から2018年12月の間に各種癌に対し初回手術を施行された症例とした。除外基準は、1)15歳未満の症例、2)原発巣の切除が行われていない症例、3)緊急手術症例とした。 主要評価項目は術後腸管麻痺の発生率とし、下記2つ以上が術後3日目以降に出現した場合を術後腸管麻痺と定義した(1.嘔気嘔吐、2.食思不振、3.排ガス・排便の欠如、4.腹部膨満、5.レントゲンでneveauの存在)。術後腸管麻痺が自然軽快した場合をClavien-Dindo分類(以下CD)grade I、症状緩和のために胃管を挿入する必要があった場合をCD分類grade II、イレウス管を挿入する必要があった場合をCD分類grade IIIaと定義した。各種癌と術式別に術後腸管麻痺の発生率を算出する。またLogistic回帰分析による多変量解析を行い、この寄与因子を明らかにする。副次評価項目は術後入院日数、合併症発生率、癒着性イレウスの発生率とする。  登録症例数は1000例を予定しており、日本外科代謝栄養学会に参加する多くの施設からの登録を切望している。この発表では研究の概要について解説する。
ISSN:0389-5564
2187-5154
DOI:10.11638/jssmn.53.3_70