EMS-1 ESSENSEプロジェクト理念に沿った周術期PONV対策と今後の展望

ESSENSEプロジェクトにおいて、患者さんの回復促進のために医療スタッフが目指すべき4つの方向性が提唱されている。2005年に発表されたERASのコンセンサスレビューの概念図は非常に明快であるが、各推奨項目の相互作用について俯瞰し整理することが必要である。その意味で方向性の一つとなっている、「栄養摂取の早期自立」を目指したフロー内にある「嘔気対策の定型化」は周術期管理において常に意識すべき内容と考える。 当院でERASチームを立ち上げ、大腸手術に対してERASプロトコールを導入してから11年経とうとしている。術当日3時間前までの成分栄養剤による経口補水と併せて、導入当初から術翌日の病院食提供...

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Veröffentlicht in:外科と代謝・栄養 2019, Vol.53(3), pp.69-69
Hauptverfasser: 真貝, 竜史, 福崎, 孝幸, 沖村, 駿平, 伊藤, 善郎, 谷口, 嘉毅, 深田, 唯史, 西田, 久史, 高山, 治, 吉岡, 節子, 北條, 茂幸, 大東, 弘明
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Zusammenfassung:ESSENSEプロジェクトにおいて、患者さんの回復促進のために医療スタッフが目指すべき4つの方向性が提唱されている。2005年に発表されたERASのコンセンサスレビューの概念図は非常に明快であるが、各推奨項目の相互作用について俯瞰し整理することが必要である。その意味で方向性の一つとなっている、「栄養摂取の早期自立」を目指したフロー内にある「嘔気対策の定型化」は周術期管理において常に意識すべき内容と考える。 当院でERASチームを立ち上げ、大腸手術に対してERASプロトコールを導入してから11年経とうとしている。術当日3時間前までの成分栄養剤による経口補水と併せて、導入当初から術翌日の病院食提供開始を続けている。術後早期経腸栄養再開が理想である反面、術後消化管運動回復時期やPONV(Postoperative nausea and vomiting)発症の観点から、かえって患者さんのQOLを下げることにつながるのではという意見もある。 当院でのPONV発症率(全Grade)はこの数年3%程度を推移した。術後イレウス発症を合わせても10%である。通常、PONVの発生頻度は術後患者の30~50%とされ、多くの報告は術後24時間以内のイベントを測定している。発症抑制に寄与していると思われる当院での多角的アプローチ法は以下の通り。(1)帰室後2時間でベッドギャッチアップ。含嗽援助後、キシリトールガム摂取開始。(2)術翌日からプロクロルペラジンまたはジフェンヒドラミンサリチル酸塩の2日間投与。(3)メトクロプラミドおよびモサプリドの一週間投与。 通常PONVの報告や工夫は麻酔科関連の学会や雑誌で取り上げられることが多い。一方外科管理中の嘔吐といえば腸管麻痺や機械的腸閉塞が原因であり、イベントはPOI(Postoperative ileus)として取り上げられ、術翌日からの嘔吐もPOIに含まれることもある。この定義の問題は前回の学術集会で提起し、今後POIの外科代謝的研究が検討される予定である。 PONVに対して欧米では抗セロトニン薬やアプレピタントなどの予防投与が可能である。本邦でも施設によっては臨床試験が実施されており、現況を整理してみる。
ISSN:0389-5564
2187-5154
DOI:10.11638/jssmn.53.3_69