II-01 競走馬における抗体応答の遺伝的影響に関する研究
【はじめに】ワクチン接種による抗体応答には, 応答の良い馬と良くない馬が存在することが知られている. 抗体応答の個体差には環境要因や遺伝が関与すると考えられるが, これらを統計学的に評価する試みは報告されていない. ところで, 日本では2007年夏までの35年間, 馬インフルエンザの発生が無かったため, ワクチン接種のみの効果を評価するのには良いモデルである. そこで, インフルエンザワクチンに対する抗体応答への遺伝の関与について統計学的に解析した. 【材料と方法】JRA美浦および栗東トレーニングセンターに繋養され, インフルエンザワクチンの予防接種を受けたサラブレッド種競走馬から毎年, 春,...
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Veröffentlicht in: | 動物遺伝育種研究 2010, Vol.38 (2), p.133-133 |
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Hauptverfasser: | , , , , |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 【はじめに】ワクチン接種による抗体応答には, 応答の良い馬と良くない馬が存在することが知られている. 抗体応答の個体差には環境要因や遺伝が関与すると考えられるが, これらを統計学的に評価する試みは報告されていない. ところで, 日本では2007年夏までの35年間, 馬インフルエンザの発生が無かったため, ワクチン接種のみの効果を評価するのには良いモデルである. そこで, インフルエンザワクチンに対する抗体応答への遺伝の関与について統計学的に解析した. 【材料と方法】JRA美浦および栗東トレーニングセンターに繋養され, インフルエンザワクチンの予防接種を受けたサラブレッド種競走馬から毎年, 春, 秋の2回採取した血清のうち, 1998年から2007年春までの間に採取したものを試料とした. 血球凝集抑制(HI)法による抗体価を測定し, 測定ロット間に有意差が無いワクチン接種5-7ヶ月後の1,286件のデータを解析対象とした. 統計量の解析にはSASプログラムパッケージの一般化線型モデル(GLM)を用い, 遺伝率の推定には, MTDFREMLプログラムを用いた. 【結果と考察】インフルエンザワクチンの接種が抗体価に影響を及ぼす可能性のある環境要因として, ワクチン接種回数, 性, 年齢, 繋養場所の違い, 春と秋の採血時期の違いについて, 一般線形モデルを用いた分散分析を行ったところ, 季節(春か秋), 場所(美浦か栗東)に関しては, 抗体価に影響しないことがわかった. 一方, 性に関しては, 雌の方が雄より有意に高いことが明らかになった. さらに, 重複を無くした1,034頭の個体記録に対して, 3世代の血統情報を加えたデータベースを作製し解析した. 抗体価は正規分布を示し, 遺伝率は, 0.15であった. ワクチン接種の抗体応答に遺伝の影響が認められたことから, 抗体応答もゲノム研究の対象となり得ることが示された. |
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ISSN: | 1345-9961 |