V-05 褐毛和種牛にみられた血液凝固不全症(血友病A)におけるF8遺伝子の変異

血友病Aは血液凝固第VIII因子の欠乏による遺伝性の出血性疾患である. 本疾患はX染色体上に存在する第VIII因子遺伝子(F8)の突然変異に起因し, 伴性遺伝の様式をとる. 我々は同一の繁殖雌牛を母牛とする半兄弟の褐毛和種とその交雑種に皮下出血, 筋間および気管食道周囲に出血を伴う血液凝固不全症2例をみいだした. 止血スクリーニング検査により, プロトロンビン時間(PT)は基準範囲内あるが, 活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)が延長しており, 内因系凝固因子のうち第VIII因子が重度に減少していた. さらに, ヒト血小板凝集能によるvon Willebrand因子の活性は基準範囲内で...

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Veröffentlicht in:動物遺伝育種研究 2009, Vol.37 (2), p.186-186
Hauptverfasser: Khalaj Maryam, 下城研一, 宮寺恵子, Abbasi Abdol R, 米田一裕, 小川博之, 森友靖生, 国枝哲夫
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:血友病Aは血液凝固第VIII因子の欠乏による遺伝性の出血性疾患である. 本疾患はX染色体上に存在する第VIII因子遺伝子(F8)の突然変異に起因し, 伴性遺伝の様式をとる. 我々は同一の繁殖雌牛を母牛とする半兄弟の褐毛和種とその交雑種に皮下出血, 筋間および気管食道周囲に出血を伴う血液凝固不全症2例をみいだした. 止血スクリーニング検査により, プロトロンビン時間(PT)は基準範囲内あるが, 活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)が延長しており, 内因系凝固因子のうち第VIII因子が重度に減少していた. さらに, ヒト血小板凝集能によるvon Willebrand因子の活性は基準範囲内であることから, 血友病Aであることが確定診断された. そこで, 本疾患の原因となる変異を同定するために, 発症個体の肝臓より抽出したRNAを用いたRT-PCR法により, F8遺伝子の全コード領域と5'および3'の非コード領域を増幅し, その塩基配列を決定した. その結果, 発症個体のF8遺伝子では第VIII因子の2153番目のアミノ酸のロイシンからヒスチジンへの置換を引き起こす, TからAへのミスセンス変異が存在することが明らかとなった. このアミノ酸置換は, 第VIII因子の機能に重要な役割を果たすC1ドメイン中の種間で強く保存されているアミノ酸残基に生じており, また発症個体に特異的であることから, 褐毛和種に発生した血友病Aの原因となる変異であると結論づけられた. 同一地域内を含む褐毛和種の多数の個体についてF8遺伝子の遺伝子型を調べたところ, 発症個体とその母親にしか変異遺伝子は検出されず, 本変異遺伝子は散発性のもので褐毛和種の集団中には拡散していないことが推測された. また, 伴性の遺伝様式をとることから種雄牛を通して急激に集団中に拡散する可能性も少なく, したがって本疾患は褐毛和種の育種上は大きな問題とはならないと考えられた.
ISSN:1345-9961