III-01 黒毛和種および褐毛和種牛における血液凝固第XI因子欠乏症

第XI因子は内因系凝固活性に関与する血液凝固因子であり, その遺伝的欠乏症はヒト, イヌ, ウシ等で報告されている. これまでに我々は黒毛和種牛に第XI因子欠乏症が高頻度で発生することを明らかにするとともに, 本疾患がウシ第XI因子(F11)遺伝子における11塩基の欠失に起因することを解明し, 本疾患の遺伝子診断法を確立している. 第XI因子欠乏症の臨床症状は他の凝固因子欠乏症に比べて軽度であり, 顕著な出血症状は示さないが, ホルスタイン種の第XI因子欠乏症では繁殖障害との関連性も指摘されており, 黒毛和種牛における本疾患の変異型遺伝子の拡散状況および, 繁殖成績を含めた詳細な臨床症状を明ら...

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Veröffentlicht in:動物遺伝育種研究 2007, Vol.35 (2), p.236-236
Hauptverfasser: 宮寺恵子, 國枝正幹, 浅野友香, 森友靖生, 国枝哲夫, 小川博之
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:第XI因子は内因系凝固活性に関与する血液凝固因子であり, その遺伝的欠乏症はヒト, イヌ, ウシ等で報告されている. これまでに我々は黒毛和種牛に第XI因子欠乏症が高頻度で発生することを明らかにするとともに, 本疾患がウシ第XI因子(F11)遺伝子における11塩基の欠失に起因することを解明し, 本疾患の遺伝子診断法を確立している. 第XI因子欠乏症の臨床症状は他の凝固因子欠乏症に比べて軽度であり, 顕著な出血症状は示さないが, ホルスタイン種の第XI因子欠乏症では繁殖障害との関連性も指摘されており, 黒毛和種牛における本疾患の変異型遺伝子の拡散状況および, 繁殖成績を含めた詳細な臨床症状を明らかとすることは, 我が国の肉牛生産における本疾患の影響を解明する上で重要である. 627頭の黒毛和種牛を調査した結果, 正常牛(野生型ホモ)325頭, 保因牛(ヘテロ)246頭, 罹患牛(変異型ホモ)56頭を認め, 変異型遺伝子の頻度は0.29と, 本疾患の変異型遺伝子が非常に高い頻度で集団中に拡散していることが明らかとなった. また, これらの内, 176頭の繁殖牛の授精・分娩, 子牛の状態を調査比較したところ, 各遺伝子型間で大きな差は認められなかったが, 流産・死産等の発生率が変異型ホモの母牛では多い傾向にあった. また, 褐毛和種牛においても本遺伝子の変異を調べたところ, 黒毛和種と同じ11塩基の欠失による変異型遺伝子が存在し, 黒毛和種に比べるとその遺伝子頻度は低いものの, やはり集団中に広く拡散していることが明らかとなった. さらに, 頭蓋裂を発生した褐毛和種牛新生仔の一例に変異型ホモで血液凝固不全を呈する個体が認められた. 現時点では, 第XI因子欠乏症とこれら流産死産, 奇形との関連は明確ではないが, その遺伝子頻度がきわめて高いことから, 今後これらの関連をより詳細に調査する必要があると考えられた.
ISSN:1345-9961