第299回:後天性第V因子欠損症により出血性ショックをきたした1症例(A-7797)
「症例概要」1. 患者:59歳, 男性, 職業;会社員 2. 主訴:左腰部痛, 四肢皮下出血 3. 家族歴:特記すべきことなし. 4. 既往歴 30歳時に細尿膜管膿瘍に対して手術施行し膀胱を1/3切除. 5. 現病歴 2010年8月20日血尿を認め, 翌21日に腰痛を自覚, 23日には両肩に皮下出血を認めた. 他院にて血液検査上, PT-INR 8.89, APTT>180 secと凝固異常が見られた. また, 造影CTにて両側水腎症と腎孟尿管移行部に後腹膜軟部影を認めた. 後腹膜線維症やIgG4関連疾患, 悪性リンパ腫などが疑われ, また大量出血のリスクもあるため8月30日北里大学病院血液内...
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Veröffentlicht in: | 北里医学 2011, Vol.41 (2), p.132-132 |
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Hauptverfasser: | , , |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 「症例概要」1. 患者:59歳, 男性, 職業;会社員 2. 主訴:左腰部痛, 四肢皮下出血 3. 家族歴:特記すべきことなし. 4. 既往歴 30歳時に細尿膜管膿瘍に対して手術施行し膀胱を1/3切除. 5. 現病歴 2010年8月20日血尿を認め, 翌21日に腰痛を自覚, 23日には両肩に皮下出血を認めた. 他院にて血液検査上, PT-INR 8.89, APTT>180 secと凝固異常が見られた. また, 造影CTにて両側水腎症と腎孟尿管移行部に後腹膜軟部影を認めた. 後腹膜線維症やIgG4関連疾患, 悪性リンパ腫などが疑われ, また大量出血のリスクもあるため8月30日北里大学病院血液内科・腎臓内科へ紹介となり同日緊急入院. 血液検査では著しい凝固異常を認め, 第V因子のインヒビターが検出され, 第V因子欠損症の診断にて9月7日からステロイド治療を開始した. しかし, 9月8日後腹膜出血など全身の出血をきたし出血性ショックの状態となった. 大量輸血を施行し血圧を保持していたが, 大量輸血の影響で左大量胸水貯留, さらにこれによる無気肺, 右肺水腫を合併し呼吸状態が悪化した. 9月12日には再度出血をきたし輸血にて対応したが, 心室細動を発症し, その後心肺停止となり9月13日永眠された. 6. 司会者のコメント 劇症型の後天性第V因子欠乏症の症例である. 後天性第V因子欠乏症は, 基礎疾患として, 牛トロンビン製剤や抗生剤などの投与例, 自己免疫性疾患や悪性腫瘍などが報告されているが, 本症例には明確なものはなかった. また, CTで認められた下大静脈から右心房内の腫瘤性病変や, 水腎症, 膀胱壁の肥厚は, 剖検所見よりいずれも血腫と考えられた. これまでの報告では, 比較的軽症例が多いが, 本症例はステロイドなどの免疫抑制療法や補充療法が無効で全身的な出血で死の転帰をたどったと考えられる. 後天性第V因子欠乏症は非常に稀な疾患であり, 今後の症例の蓄積が望まれる. |
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ISSN: | 0385-5449 |