下顎骨前方移動術を行った7症例の顎態変化

I. 緒言 下顎骨前方移動術後の咬合は, 下顎骨後方移動術後のそれに比べ, 安定を得にくいことが指摘されている1-3). 従来より, 外科的に前方移動された下顎骨の骨格性後戻り様相については多くの報告をみる4-17). 骨格性の後戻りに関与する要因として, 下顎骨前方移動量4-7)手術術式, 固定 法5, 8-10), 下顎頭の位置決め等の外科手術に関する問題11-13), 手術に伴って伸展される舌骨上筋群の影響の問題14, 15), 下顎下縁平面角の傾斜等の下顎骨形態の問題4, 5, 8, 16)等が指摘されてきた. しかし一方で, 外科的矯正治療後の歯性の変化様相についての報告はほとんどみ...

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Veröffentlicht in:日本顎変形症学会雑誌 2001/12/15, Vol.11(3), pp.182-193
Hauptverfasser: 川元, 龍夫, 本橋, 信義, 濱田, 俊, 今村, 尚子, 深田, 健二, 中川, 史彦, 小野, 卓史, 加藤, 嘉之, 黒田, 敬之
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:I. 緒言 下顎骨前方移動術後の咬合は, 下顎骨後方移動術後のそれに比べ, 安定を得にくいことが指摘されている1-3). 従来より, 外科的に前方移動された下顎骨の骨格性後戻り様相については多くの報告をみる4-17). 骨格性の後戻りに関与する要因として, 下顎骨前方移動量4-7)手術術式, 固定 法5, 8-10), 下顎頭の位置決め等の外科手術に関する問題11-13), 手術に伴って伸展される舌骨上筋群の影響の問題14, 15), 下顎下縁平面角の傾斜等の下顎骨形態の問題4, 5, 8, 16)等が指摘されてきた. しかし一方で, 外科的矯正治療後の歯性の変化様相についての報告はほとんどみられない. 術後の咬合の安定性を考えるためには, 骨格性変化と歯性変化の両者をあわせて考慮する必要があろう. 本研究では, 下顎骨前方移動術を用いた外科的矯正治療患者の前歯部咬合状態に着目し, 初診時から保定中までの顎態変化を個々の症例について検討し, 術後の咬合変化に関与する形態学的要因を考察した. II. 研究資料および方法 1. 研究対象ならびに資料 1)研究対象 研究対象として, 本学歯学部附属病院にて下顎骨前方移動術を施行した外科的矯正患者7名(男性2名, 女性5名)を用いた. 手術は全症例とも下顎枝矢状分割術単独で, Mentonにおける下顎骨前方移動量の平均は, 前方へ4.1 mm, 上方へ1.4mmであった. 対象とした7症例の初診時における顎態パターン, 骨片固定法, および抜歯部位をTable 1に示す. 全症例で, SNAは日本人平均値18)の1S.D.を超えていなかったが, 7症例中4症例で, SNB値が-1S.D.を超えて小さく, A-B diff. が1S.D.を超えて大きかった. 上下顎前歯歯軸には著しい唇側傾斜と舌側傾斜が混在し, 下顎下縁平面角にも著しく大きな値と小さな値が混在した. overjetは平均7.9mm, overbiteは最大13.2mm, 最小-5.0mmと過蓋咬合と開咬が混在していた. 骨片固定法はネジ止め固定法が6名, 囲繞固定法が1名であった. 術前矯正治療では, 上下顎小臼歯抜去3例, 上顎小臼歯抜去2例, 下顎小臼歯抜去および非抜歯症例がそれぞれ1例であった. なお, 著しい顔面非対称症例や先天異常症例は含まれていない.
ISSN:0916-7048
1884-5045
DOI:10.5927/jjjd1991.11.182