P-D-6.下顎枝矢状分割術後の近・遠位骨片の評価-PLLA製スクリューとチタン製スクリューとの比較

【緒言】骨格性下顎前突症患者に対する外科的矯正治療において, チタン製スクリューを用いた下顎枝矢状分割術が広く行われている. しかし, 一方で, チタン製スクリューの使用は, 術後の金属イオン溶出や, stress shieldingによる骨脆弱化等の為害作用を引き起こす可能性が指摘されている. これらの問題点を解決するために, 近年, 吸収性骨片接合材ポリ-L-乳酸(PLLA)製スクリューを用いて下顎枝矢状分割術を行う試みがなされてきているが, 術後の近遠位骨片の安定性について報告した例はほとんど認められない. そこで今回, PLLA製スクリューとチタン製スクリューによる下顎枝矢状分割術後の...

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Veröffentlicht in:日本顎変形症学会雑誌 2000, Vol.10 (2), p.222-222
Hauptverfasser: 井上理香, 日浦賢治, 横関雅彦, 森山啓司
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:【緒言】骨格性下顎前突症患者に対する外科的矯正治療において, チタン製スクリューを用いた下顎枝矢状分割術が広く行われている. しかし, 一方で, チタン製スクリューの使用は, 術後の金属イオン溶出や, stress shieldingによる骨脆弱化等の為害作用を引き起こす可能性が指摘されている. これらの問題点を解決するために, 近年, 吸収性骨片接合材ポリ-L-乳酸(PLLA)製スクリューを用いて下顎枝矢状分割術を行う試みがなされてきているが, 術後の近遠位骨片の安定性について報告した例はほとんど認められない. そこで今回, PLLA製スクリューとチタン製スクリューによる下顎枝矢状分割術後の近遠位骨片の安定性について比較検討するとともに, 術後の知覚神経麻痺についてのアンケート調査を行ったので報告する. 【資料および分析方法】徳島大学歯学部附属病院において, 下顎枝矢状分割術を行った骨格性下顎前突症患者のうち, スクリューを片側3本以上用いて骨片の固定を行った. PLLA群6症例, チタン群6症例を対象に検討を行った. 資料としては, 術前(A), 術直後(B), 術後6ヵ月(C), 術後1年(D)の各時期に撮影された正面および側面頭部X線規格写真とパノラマX線写真を用いた. アンケート調査はPLLA製スクリューを用いて手術を行い, 術後5ヵ月以上経過した12名を対象に行った. 【結果】1. 側面頭部X線規格写真による分析の結果から, PLLA群とチタン群との間に下顎の後戻りに関して有意な差は認められなかった. 2. 正面および側面頭部X線規格写真より近位骨片との位置変化に関して検討を行ったところ, PLLA群とチタン群の間に有意な差は認められなかった. 3. 術後1年のパノラマX線写真を用いて, 骨片接合部後縁の観察を行ったところ, チタン群と比較しPLLA群では, 滑らかで移行的な形態を示す症例を多く認めた. 4. アンケートの回答が得られた8名のうち, 5名が知覚神経麻痺の残存を訴えたが, スクリュー埋入部の痛みや違和感を訴えた症例は認められなかった. 【結論】PLLA製スクリューは下顎枝矢状分割術における骨片の固定に有用である可能性が示唆された.
ISSN:0916-7048