1-A-7.下顎前方移動術のオーバーコレクションを可能とする術前矯正治療術式の考案
下顎後退をともなう骨格性II級症例の下顎前方移動術で問題となるのは, 術後の下顎位置の安定性, すなわち術後リラプスが大きいことである. リラプス様変化のため, 術後矯正治療で対応に苦慮することや, 機能咬合が獲得できないことが経験される. 従来は, 下顎前方移動時に, 切端咬合かわずかな反対咬合となるようにオーバーコレクションすることが推奨されてきた. しかしこの方法では, 手術後に不安定な咬合状態となり, また術後に予想 外の変化が生じた場合に, 術後矯正治療に苦慮することがある. われわれは, 近年下顎前方移動の術前矯正治療終了時に, 上顎歯列の犬歯遠心部に空隙を維持した状態でオーバージ...
Gespeichert in:
Veröffentlicht in: | 日本顎変形症学会雑誌 2000, Vol.10 (2), p.172-173 |
---|---|
Hauptverfasser: | , , , , , , , , , |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
Tags: |
Tag hinzufügen
Keine Tags, Fügen Sie den ersten Tag hinzu!
|
Zusammenfassung: | 下顎後退をともなう骨格性II級症例の下顎前方移動術で問題となるのは, 術後の下顎位置の安定性, すなわち術後リラプスが大きいことである. リラプス様変化のため, 術後矯正治療で対応に苦慮することや, 機能咬合が獲得できないことが経験される. 従来は, 下顎前方移動時に, 切端咬合かわずかな反対咬合となるようにオーバーコレクションすることが推奨されてきた. しかしこの方法では, 手術後に不安定な咬合状態となり, また術後に予想 外の変化が生じた場合に, 術後矯正治療に苦慮することがある. われわれは, 近年下顎前方移動の術前矯正治療終了時に, 上顎歯列の犬歯遠心部に空隙を維持した状態でオーバージェットを従来よりも大きな状態にすることによって, 下顎前方移動後に適切なオーバージェットと犬歯関係となり, 臼歯咬合が安定した状態でもオーバーコレクションが可能となり, さらに術後矯正治療時に術後の下顎位変化を確認しながら上顎スペースを利用することによって, リラプス様変化にも対応しやすい治療術式を考案し臨床的に良好な結果を得ている. これらの治療結果から, つぎのようなことが示唆された. 1. 本術式により, 適切なオーバージェットと犬歯関係で臼歯が安定咬合した状態でも下顎前方移動術のオーバーコレクションが可能である. 2. オペ後の臼歯関係がよりIII級に保たれ, 上顎スペースを矯正治療のために利用可能であるので, 術後矯のリラプス様変化に臨床的に対応することができる. 3. これらの方法を適用した5症例から, 妥当な下顎前方移動量を設定した上で本法を応用することにより治療効果の予知性が向上すると思われる. 質問 北海道大歯口腔機能 佐藤嘉晃 1. 症例によってspaceの量を調整しますか. 2. なぜspaceは犬歯の遠心なのですか. 回答 新潟大歯歯矯正 毛利環 1. 下顎前方移動量が多い場合に, 多くすることはやっていません. 顎間固定中の下顎変化は, 上下顎歯が, 顎の変化にともなって移動するので, 問題ないと思いますが, 顎間固定除去後変化の方が, 臨床的に問題があると思われますので, 本法では, それに対する対策だと思っています. 2. アンマスメカニックスは用いてません. 主として, ope後の位置決めの目安となるという意味と, 術後矯正治療での対応のしやすさから, 3番の遠心に与えています. 質問 氏名不詳 1. オーバーコレクションを行った時に臼歯嵌合に問題があるので, 術後変化に影響を与えるのではないか. 2. 術後の下顎変化には顎間固定期間が関係すると思うが, 顎間固定期間はどのくらいなのか. 回答 新潟大歯歯矯正 毛利環 1. 実際に3mm程度では問題ない. むしろ切端咬合では臼歯離開させた方が問題あると思われる. 2. 今回, 各症例の顎間固定期間については検討を加えていません. 本学では, 一般的に2~3週間ですが, ope法等により, ケースbyケースで対応して好ますが, 下顎移動量に関しては, あまり考慮してないと思います. |
---|---|
ISSN: | 0916-7048 |