Le Fort I型骨切り術, 全上下顎同時移動術の手術術式‐注意点と手術のコツについて

Le Fort I型骨切り術は単独で施行されることは少なく, 顔面の高度および広範囲の変形修正のため, 下顎枝矢状分割法との併用, すなわち全上下顎同時移動術の一部として施行されることが多い. 今回は先ずLe Fort I型骨切り術施行上の注意点, 次いで全上下顎同時移動術を安全かつ確実に施行する上でのコツについて述べる. [1]施行上の注意点 (1)骨切り骨片の血行状態の術前評価:特に唇顎口蓋裂患者で小上顎症および上顎後退症を有する症例は要注意. 初回口蓋閉鎖術により大口蓋動脈の血流低下を来したものでは本手術最大の合併症である上顎骨切り骨片の部分~全体壊死が生じうる. 術前, ドップラー血流...

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Veröffentlicht in:日本顎変形症学会雑誌 1997-10, Vol.7 (2), p.208-208
1. Verfasser: 鶴木隆
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:Le Fort I型骨切り術は単独で施行されることは少なく, 顔面の高度および広範囲の変形修正のため, 下顎枝矢状分割法との併用, すなわち全上下顎同時移動術の一部として施行されることが多い. 今回は先ずLe Fort I型骨切り術施行上の注意点, 次いで全上下顎同時移動術を安全かつ確実に施行する上でのコツについて述べる. [1]施行上の注意点 (1)骨切り骨片の血行状態の術前評価:特に唇顎口蓋裂患者で小上顎症および上顎後退症を有する症例は要注意. 初回口蓋閉鎖術により大口蓋動脈の血流低下を来したものでは本手術最大の合併症である上顎骨切り骨片の部分~全体壊死が生じうる. 術前, ドップラー血流計で評価し, 疑われる症例には, 前庭部粘膜切開を縦にするが骨切り線のlevelを上げる. (2)翼突上顎結合部の骨ノミによる離断時, ノミ先端が翼突静脈叢を損傷し, 大出血を生じないよう, 骨ノミの挿入方向, 深さに注意. (3)水平骨切り線は上顎歯牙根尖損傷を防止するため根尖より3mm以上はなすこと. [2]全上下顎同時移動術施行上のコツ (1)適応症を選ぶこと:術前は勿論, 術中も本法施行の適否を検討する. これは手術stepの順序に関係する. 私は先ず下顎枝矢状分割法を行い, 出血量, 顔面形態及び咬合状態の改善状況を検べ, 必要な症例にLe Fort I型骨切り術を行うことに決めている. ほとんど結果が同じであれば手術侵襲を可及的に減じることが大切である. (2)自己血輸血, 低血圧麻酔の応用:出血量の増大に伴う同種血輸血, この後に生じる全身的合併症を可及的に減じることが必須である. (3)骨切り骨片移動位置の評価:術前設計どおり骨片移動を行うため, 種々の創意工夫が大切である. (a)術中側面X線規格写真装置を自作, 使用している. 上下顎の前後的移動, 咬合平面の前後的傾斜の策定に極めて有用である. pair compasses, チョコバー(咬合平面指示板)は顔面対称性をつくり, 咬合平面の左右的傾斜の修正に有用である. 正面頭部X線写真で最終確認する. 術前顔面石膏模型, model operation, paper surgery, 術前3次元CT立体modelなども駆使して骨切り骨片移動を行う. (4)C.R.=C.O.:中心咬合位と中心位は一致させる. 私の骨接合法は上顎miniplate4枚, 下顎はmini rag screw片側2本計4本とし, 骨接合完了後, 顎間固定を除去してC.R.=C.O.を確認する. 不一致の場合はやり直し. (5)その他:患者の精神的, 肉体的負担を可及的減じるよう, 顎間固定はなくすよう, 経管栄養はなくし, 手術翌日より経口摂取できるように術者は努力し, 良好な結果が永続するよう長期予後を調査し, 患者の口腔衛生状態を監視指導しなくてはならない.
ISSN:0916-7048