A-34.開咬症例の術前矯正治療についての一考察
開咬, 特に骨格的にIII級傾向を有する症例では一般に下顔面高, 下顎下縁平面角および顎角が大きい. また歯槽的に上顎前歯の唇側傾斜が著明な場合が多い, などの特徴がある. このような症例の手術法には, 現在上下顎同時移動術, 下顎骨体切除術や下顎の上方回転を伴った後退術等がある. 本学ではまた, このような開咬症例の術前矯正治療には上顎の歯を抜歯し, 唇側傾斜している上顎前歯の挺出を兼ねた舌側移動を行い, 極力overbiteを増加させたのち, 下顎枝矢状分割法を施行している. 本法によれば下顎の上方回転を極力抑えた移動が可能となり, 上顎前歯を舌側に移動しているため, 下顎の後退量が十分に...
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Veröffentlicht in: | 日本顎変形症学会雑誌 1992, Vol.2 (2), p.178-179 |
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Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 開咬, 特に骨格的にIII級傾向を有する症例では一般に下顔面高, 下顎下縁平面角および顎角が大きい. また歯槽的に上顎前歯の唇側傾斜が著明な場合が多い, などの特徴がある. このような症例の手術法には, 現在上下顎同時移動術, 下顎骨体切除術や下顎の上方回転を伴った後退術等がある. 本学ではまた, このような開咬症例の術前矯正治療には上顎の歯を抜歯し, 唇側傾斜している上顎前歯の挺出を兼ねた舌側移動を行い, 極力overbiteを増加させたのち, 下顎枝矢状分割法を施行している. 本法によれば下顎の上方回転を極力抑えた移動が可能となり, 上顎前歯を舌側に移動しているため, 下顎の後退量が十分にとれ, かつ顔面高の減少, オトガイの突出の改善など良好な顔貌の改善を得ることができる. 今回はこのような処置を施し好結果を得た2症例について報告する. 初診時27ylmの女子, 主訴前歯部開咬, overbite-2.8mm, overjet-0.5mm, 臼歯部Angle III級を示し, 4554より前方は開咬状態を呈していた. 44を抜歯し術前矯正治療を行った後, 下顎枝矢状分割法による下顎後退術を施行した. 初診時19ylmの女子, 主訴前歯部開咬, overbite-7.2mm, overjet-4.8mmで, 4534より前方は開咬状態を呈していた. 2を抜歯し術前矯正治療を行った後, 下顎枝矢状分割法による下顎後退術を施行した. 質問 広大, 歯, 矯正 山田哲郎 骨格正開咬症に対する術前矯正で上下前歯を挺出させる方針をとることは手術による骨格の改善ができないと同時にGummy smileを作り出すことになる. 従って治療方針としては骨格の開咬を改善し, 歯, 歯周組織に無用な負担を掛けないように, 骨格の後戻り防止策(Vertical chin cap, Maxilo-mandibularskeletal Fixation等)を採るのが本筋ではないでしょうか. 回答 鶴見大, 歯, 矯正 竹下寛 質問のとおり症例によっては上顎骨の手術等による骨格の改善が必要な場合もあると考えますが, 今回の症例は上顎骨の前後的, 垂直的位置, 大きさに問題はなく下顎骨の形態異常による開口症例であり, 挺出を伴う上顎前歯の舌側移動と下顎前歯の唇側移動により, 下顎のみの手術で, 術後適正な歯軸が得られている. このため術後良好な顔貌が得られ, 予後も安定している. また本法によれば下顎枝矢状分割時の回転を極力おさえているため手術による後戻りも少なくVertical chin cap等の使用を行わなくても術後良好な状態が保たれている. Gummy smileについては上顎骨の手術で上顎を下方におろしても起こる場合があり, 上顎に外科的浸襲を加えなくとも本症例のような結果が得られれば本法も有効と考えられます. 質問 東医歯大, 歯, 2矯正 野口規久男 第1症例ではOpe前にbracketを撤去されているが, 術後矯正を行っているのか. 術後矯正の必要性に対する貴教室の一般的見解をお教え下さい. 回答 鶴見大, 歯, 矯正 竹下寛 当教室では原則的には術前矯正のみで終了し, 術後矯正を行わない. なぜならば本当の意味での術後矯正例は少く, 再発治療が主なものとなる. また術後治療では歯の挺出を行うことが多く, 成人の場合再発し易く, その効果も疑わしい. 質問 東歯大, 矯正 末石研二 積極的に前歯の挺出を計るという観点からは術前矯正中に垂直顎間ゴムなどを使用する事が考えられるが, その様な術式であると考えて良いのでしょうか. 回答 鶴見大, 矯正 竹下寛 今回の症例については, 症例1は上顎第1小臼歯抜歯で上顎前歯を舌側移動しており, その際に拠出を伴っている. 症例2では下顎歯列にreverse Spee curveを伴っているため, 通常のlevelingを行うことにより, かなりoverbiteの改善が得られたので特に術前矯正治療中に垂直顎間ゴムを多用することは行っておりません. |
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ISSN: | 0916-7048 |