発症時Dダイマー値上昇を示さなかった尿膜管癌関連脳卒中の1例

症例は56歳男性.左下1/4同名半盲で発症し,脳MRIで多皮質領域に新旧梗塞巣を認めた.Dダイマー値正常で,各種検査にて塞栓源は検出されず,1月後に運動性失語で再発した.CTで膀胱腫瘍を認め,摘出後の病理で多量ムチン粘液を伴う腺癌組織から,尿膜管癌と診断された.ヘパリン投与中に再発がなく,腫瘍摘出後長期間再発がない経過から,本例は尿膜管癌関連脳卒中と考えられた.Dダイマー値上昇を示さない癌関連脳卒中は非典型的と考えられるが,本例では,凝固系活性化よりも多量に存在したムチン粘液を介する血栓形成が,優位に働いた機序が推測された.癌関連血栓症における静脈血栓塞栓症と脳梗塞の病態は,必ずしも同一ではな...

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Veröffentlicht in:脳卒中 2022, Vol.44(5), pp.534-540
Hauptverfasser: 市川, 大, 深谷, 浩史, 石田, 俊哉, 提嶋, 眞人, 大川, 聡
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:症例は56歳男性.左下1/4同名半盲で発症し,脳MRIで多皮質領域に新旧梗塞巣を認めた.Dダイマー値正常で,各種検査にて塞栓源は検出されず,1月後に運動性失語で再発した.CTで膀胱腫瘍を認め,摘出後の病理で多量ムチン粘液を伴う腺癌組織から,尿膜管癌と診断された.ヘパリン投与中に再発がなく,腫瘍摘出後長期間再発がない経過から,本例は尿膜管癌関連脳卒中と考えられた.Dダイマー値上昇を示さない癌関連脳卒中は非典型的と考えられるが,本例では,凝固系活性化よりも多量に存在したムチン粘液を介する血栓形成が,優位に働いた機序が推測された.癌関連血栓症における静脈血栓塞栓症と脳梗塞の病態は,必ずしも同一ではないと考えられ,診断におけるDダイマー値以外の新たな指標や,脳梗塞治療のエビデンスの確立が待たれる.
ISSN:0912-0726
1883-1923
DOI:10.3995/jstroke.11003